第34話 第一回神社命名大会
「第一回神社命名大会の開催ですね」
「何ですか藪から棒に」
パチパチパチーと拍手し聞きなれぬ大会を開催し始めた天樹姫にシュメーロンが反射的にツッコんだのも無理はない。しかし天樹姫はそれを華麗にスルー。いそいそと小箱から白無地の横断幕と大きめサイズの筆と硯を取り出すと、筆を走らせる。無駄に達筆な字で日本語で『第一回神社命名大会』――達筆過ぎてもはやシュールだった。
「……ちょっと待ってください。何ですかこの字、見たことないんですが。見たことないのに意味わかるんですがなんなんですか!?」
「それは私からは何とも」
がっくりと項垂れるシュメーロンを尻目に。横断幕を天井からぶら下げる天樹姫。そこでようやく主が変な……もとい面白そうなことを始めたと察したアコとウスケが外から滑り込んできた。そして横断幕の文字が眼に入ると「あぁそう言えば」と言いたげに2匹とも頷いていた。
「それでは大会の概要を説明します。と言ってもみんなで意見言い合って神社の名前決めるのであって厳密には大会じゃありませんね。では皆さんスタート!」
「アマギキさんノリで生きてませんか?」
天樹姫の合図に寄り皆、真剣に神社の名前について考え始める。本日初めて訪問したシュメーロンも疑問に思いながらも参加しているあたり、彼もノリは良いのかもしれない。
うんうんと唸り声が続く中、ビシッと気持ちのいい音を出しながら挙手をした者がいた。リフィアだ。
「我が君ー、しょのまま
「駄目です。神殿と言う名の神殿なんてないでしょう?」
「あゃー」
リフィアの意見は一考の余地なく即却下された。
次に挙手したのは――ウスケだ。
「ババウ!」
「ほうほう、私の知っている神社の名前を拝借すると。はい、没」
「キュウン……」
名案だと思ったのにーと悲し気に鳴くウスケだが、オリジナリティが大好きな天樹姫からしたら名前をパクるなんてご法度だ。
と、またしても長考に入るかと思うや否や次の提案者が現れた。なんとゲストのシュメーロンだ。
「アマギキ神社はどうだろう」
「御免なさいマジでそれだけは勘弁してください」
シュメーロンの案に天樹姫繰り出したるは、華麗な土下座。その所作の滑らかさたるやまるで流水の如くだとのちにシュメーロンは語る。
シュメーロンからすれば神殿の名前にはよく崇められている神の名前を冠しているものが多いことからくる提案で彼からすれば神の如き力を持つ天樹姫はそれに相応しいのではないか――ということなのだが
「私の
そんなものなのかなと首を傾げるシュメーロン。ちなみに、天樹姫以外の全員はシュメーロンの案に乗り気であったが却下されさらにしょんぼりしてしまった。主のことが大好きな者たちであった。
が、その中で1匹、ハッと顔を上げたものがいた。
「キャン!」
「アコ?ふむふむ……あぁ、そうか天稲大神様のお名前を借りればいいんですね!って言うか"そういうもの"でした!」
そう。日本の神社の名前は奉っている神の名前を用いているものが多い。有名所で言うと八幡大神の八幡神社。ウカノタマノオオカミ――稲荷神――の稲荷神社といった具合に。
天稲大神も日本の神の1柱。例に挙げた2柱よりも段違いに知られてなさすぎる神だが神社は存在する。確かその名前は
なのでたまに「甘党神社行ってきた!」みたいな誤字ツイートが流れることもしばしばあった。なお天稲大神自身、語呂の悪さの自覚と甘党であるので公認だったりする。
「では"天稲神社"で決定かな?」
「いいえ。頭に地名が付くんですが……えぇとこの森って名前あるんですか?」
「えぇと、確かルドゥーラ大森林だったかな。日が隠れるという意味があったかな?」
「はぁ、暗いイメージの名前ですね」
「雨を降らせて日を隠す私がいますからね。でもここなら太陽を拝めるのでいいですね。」
「あ、それいいですね。」
天樹姫の言葉に心当たりが見つからなかったシュメーロン。そんな彼の疑問を無視して天樹姫は何やら豪華な装飾がされた木の板とノミを取り出すと黙々と作業を始めた。何を作っているのか、気になったウスケが覗き見をしようとしたところ――アコに頭を踏みつけられ阻止されてしまった。残念。
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「出来ましたー!!」
待つこと数十分。歓喜の声と共に、天樹姫は掘り終わったそれを皆の前に掲げて発表した。
「この神社の名前は"
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