PS11 星のエナジーよ

――PS11 キミのエンカンとグゲンカ――


 俺は、ミマイのドラゴンと化した足に、優しく手を触れた。

 俺は強く念じた。

 この世界では、想いとされる力を心の奥底から捻り出した。

 ミマイの怪物としての力を我が手に……!

 瞳を瞑っていた。


「俺の想いよ、永遠に!」

「レイぱーぱ、たいへんです」

「な、何だい。むくちゃん。俺は吐き気がする。おうっふっ」


 ドラゴンの禍々しい力が俺の体を蝕む。

 俺の目の前には、美しいミマイが、へたりこんでいた。


「ミマイ! ああ、俺のミマイ……! さあ、疲れているだろう。休みなさいね」


 大司教は、一部始終を見ていた。

 あまりの荒業に驚愕した。

 いや、レイの愛に感嘆していた。


「まさか、まさか、神の力と怪物の力を一度にその身で浄化したのか……?」


  ***


 俺は、覚悟の笑みを浮かべた。

 手を伸ばして、ミマイの手を取った。

 むくちゃんとハルミ=ピンクが降り立った。

 ミマイは、むくちゃんの手を取り、むくちゃんとハルミ=ピンクは手を繋いだ。

 ハルミ=ピンクとクロスが手を取り、馬蹄形を美しい円にした。


  ***


「聞いてくれ……。皆」

「ああ、何だい? レイ」


 ミマイは目をつむっている。

 心の声を聴いているかのようだ。


「ミマイ、俺は、今までどんな人間だったかな?」

「どうって、私の愛するレイだよ?」

「い、いや……。今は、それ、違うと言うか」


 困ったことに、集中しなければならない時に気が散ってしまった。

 だが、それで緊張がほぐれた。


「俺は、この不思議な世界を旅して、色々と考えさせられたよ。俺は、皆と平和に暮らしたい。その想いはもう変えられないのだよ。俺の想いを具現化するには……」


 クロスはにこにこと俺の話を聞いている。

 ミマイはちょっとはにかんだように耳を澄ましている。


「ばーぶっ」

<ハイ・ゴシュジンサマ>


 こちらも了解のようだ。


  ***


 俺達の円の中で、心地よい想い出がすさんだ風をあたたかくする。

 しかし、その周りでは、立ち直ったクロスどもが剣を杖に次々と立ち上がっていた。


 クロスどもは、魔剣を振り上げた。

 そして、俺達の円へと轟を上げて走って来る。

 他方、倒れていた怪物どもも起き上がっっていた。

 戦いの本能のままに爪を研ぐ。

 そして、俺達の円へと襲い掛かろうと走って来る。


 神、クロスが、その大剣に魔法を絡ませ、プラチナトルネードを振り下ろし、俺達めがけて来た。

 怪物が、その牙と爪をぎらつかせ、俺達を引き裂くべく伸ばして来た。

 絶大な危機が迫っている。


  ***


 俺は、ミマイの手をぐっと力を入れて握った。

 ミマイは、むくちゃんの手にサインとしてちょんと手を握った。

 むくちゃんは、がんばってハルミ=ピンクの手をきゅんと握った。

 ハルミ=ピンクは、少年クロスへシナプス的に握るという情報を伝えた。

 そして、ラスト。

 少年クロスが俺に握り返して、一つの想いのリンクを作り上げた。


 みなぎるエナジーが五人を結んだ。

 静かに思惟する。

 それぞれの握った手から、赤い炎のような光が現れた。


 シュー、シュー、シュー、シュー、シュー……!


 各々を五つのラインが結んで、五芒星が現れた。

 このあたたかい手を二度と離すもんか!

 俺は、自分の想いをラインに乗せた。

 しっかと作られたこの結びつきは揺るがない。


「僕はレイの作った世界がみてみたい」


 クロスの念が伝わって来た。


「私はレイの作る世界で暮らしてみたいな」


 ミマイは、きっとそう願うと分かっていた。


「ぱーぱ、だいすきです」


 ありがとうな。

 ぱぱ冥利につきますよ。


<♪ ゴシュジンサマ・オマモリイタシマス>


 ハルミ=ピンク、家族なのだから、遠慮はいらないよ。


  ***


 俺は、皆の想いを嬉しく感じている。

 旅情ってヤツか?

 長い旅をしたからこそ、俺は力だけではなく、心も強くなれた。


 新しい側面を見せるミマイと絆を深められた。

 今は少年と化したクロスとも仲間となった。

 可愛いと思っていたむくちゃんとの再会がこんなにも嬉しく、愛も深まると言うものだ。

 ハルミ=ピンク、俺と心身ともに一緒になって旅をしたな。

 ここは笑えないが、貴重な体験をしたよ。


 皆の力が、この世界に何かを与えていると思う。

 俺だけの力ではない。

 皆だからだ。


  ***


 俺は、救世主らしい。

 だからこそ、俺は俺の愛する者達を守る。

 皆の力も必要だけれどもな。

 これから、新しい世界を創る。

 新しい世界とはいったいどんな世界だろう?

 この殺伐とした戦場だからこそ、俺の平和への想いは星のように明るく輝きだす。


「皆に見せたいんだ。……新しい世界を! 平和を!」


 俺は、皆に叫んだ。

 クロスらのプラチナトルネードが襲い掛かり、怪物らが上空からも飛び掛かって来た瞬間だ。

 まるで、俺を異世界へ呼んだトラックのような圧倒的な力の迫る瞬間だ。

 俺が異世界へ来た時と同じ光が流れた。


「我らの力よ……!」


 俺の六芒星、むくちゃんの五芒星、ミマイの五芒星と六芒星、ハルミ=ピンクの瞳の光、クロスの額から表出する十字架、それらがらせん状に地から天へと昇ってそのまま竜巻のごとく辺り一帯を無にした。


「行けー!」


 オーロラの光の集合体が、奪ったのは、憎しみと哀しみだった。


<♪ ワタシハ・カラダガジョウブデス>


 例の歌が聞こえた。

 残されたものは……あたたかい灯のような愛だった。


  ***


「やっとか……。やっとあの戦いは終焉をむかえたか」


 俺は、魂のみで話している気がした。

 俺は、家族の平和を想いとする救世主だった。

 だが……。

 この戦いが終わらなければ、俺達にも平和は訪れない。


「……」


 静かだな。


「平和が訪れたのだろうか?」


 体はどこも痛くない。

 俺と言う人間が、星になった気がした……。


「会いたい。会いたい……。会いたいだけなのに……! 皆はどこへ?」


 ミマイー!


 むくちゃんー!

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