PS10 そして再会は異世界にて
――PS10 キミのドラゴンとモクテキ――
「もう一度、ミマイに会うまで死ねない……!」
――何度だって、レイを守るよ。
俺の胸に響いた懐かしい綴り。
レイ。
そう呼ぶのは俺の大切な大切なミマイに違いない。
この世界のミマイだ。
戦場にあっても美しく澄み、透き通った声。
どこだ?
ミマイ、どこだ!
ゴオウウウウウ……。
この咆哮は?
俺だけではなく、皆が赤い天の消失点へと見上げた。
俺をレイと呼んだ巨大なものが大きく影を落として降って来た。
ズズズズーン……。
丁度、なぎ倒した野原に滑り込んだ。
「ミマイ! 俺だ!」
ださくてもいい、俺は泣きながら笑顔で迎えた。
「この少年は、クロス。そして、上空はむくちゃんとハルミ=ピンク」
ミマイの容貌はさらに変わっていた。
どうみてもドラゴン。
それも一等のドラゴンとなっていた。
グオオオ……。
グオロゴロ……。
「俺がレイだと分かるのだな。よっし。流石はミマイ殿だ。結婚してくれてありがとうな」
ミマイの尾を俺が撫でる。
いつだって、あたたかい……。
「禍々しいだろうだって? 今は、ドラゴンの世界で一番、いや、あらゆる世界で一番、心の美しいパートナーだよ」
――力を求め続けた。レイを守るため、レイを庇うため。それしかなかった。巨大ドラゴンになるとは知らずにね。
ミマイは、グオオオとおどけて笑った。
――レイなら、驚かないって信じていたさ。
ゴオオオオウ!
ミマイは、いつか見た怪獣映画のように、強靭な尾を一振りする。
クロスのザコどもは肉弾戦に弱くバババババババと倒れて行った。
「アメージング! ミマイ」
ハグをしたいと思ったレイだったが、首が遠かったので、六芒星の収縮したナイフで勝利の虹を描いた。
***
「とうとう、六芒星と五芒星の力の解放とクロスら仲間を得ましたな……」
大司教が、目の前の光のエレベーターから舞い降りて来た。
「だが、戦場はまだまだ広がっておる。うざうざといるクロスらでさえ、まだ倒しきれてはいまい」
周りを再び見回すと、怪物もクロスも手負いでありながら立ち上がろうとしている。
「何も変わっておらんのう。ただ、戦場がより過酷になったありさまをご覧なされい」
大司教は、戦場に向けてたくましい髭を触った。
俺が見て来た戦場よりも段々荒々しくなって来ている。
怪物もクロスどももぼろぼろなのを構わないで、憎しみと怨念だけで体を起こして戦い続けている。
その念が渦巻く中、大司教は膝を折り、ほとりと泣き始めた。
「もう、このような世界はたくさんじゃ。どうか助けてくだされ、救世主殿……」
俺は、大司教の本当の気持ちだと感じた。
「この世界と限りなく戦い続ける戦士を救って欲しいのじゃ」
俺はミマイと少年クロス、上空のむくちゃんとハルミ=ピンクを瞳に入れて誓った。
深く息を吸い、大きくうなずいた。
俺は知っていてこちらの世界に戻ったのだ。
今なら、俺の力の使い方も分かる。
俺は、ミマイ殿の夫、むくちゃんのぱーぱ、ハルミ=ピンクのちょっとしたゴシュジンなのだ。
それに、少年クロスも守りたい。
全てを幸せにつなげるために!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます