PS06 彷徨の先に
――PS06 キミのアレカラとコレカラ――
――三年後。
俺の左には愛するミマイ、俺の右には謎多きクロスが並び、旅路を行く。
ミマイは、心は変わらない。
ただし、ローブの下は、無敵の怪物の雰囲気を更なるものにしている。
クロスは、自信をつけたようだ。
十歳程度に見えたが、ここ三年で、すっかり青年になった。
全身の武具も段々と立派な物になって来ている。
歴戦の剣闘士となった。
何も変わらない俺がかすむ位だ。
俺達のこの三年間は、戦いに次ぐ戦いの旅だった。
死線を越えて行く中で、ミマイとクロスも無関係ではいられなくなった。
チームむくちゃんを探せを俺が立ち上げると、パーティーに入らざるを得なかった。
仲間として、怪物も神の子も関係なく、共に戦った。
友情が芽生えたのは一年後位だろう。
俺にとっても、むくちゃん探しがままならず、過酷な戦いも続き、三年の旅は短くなかった。
俺は、育児アンドロイドの体で戦い、歌い、調理をし、転生前とは違う武術とサバイバル術を身につけた。
それだけではなく、ミマイと夜をはさむ度、ミマイを身近に感じた。
とうとう、俺達は、一つの答えに辿り着こうとしていた。
***
「それで、ここが全ての原因なのか?」
クロスは剣を地に刺し、向こうを睨める。
「まさか、ここだったとはな……。流石に盲点だったな」
ミマイは、軽くローブから目を光らせた。
俺達は、少し離れた丘の上から、キルト大聖堂を眺めていた。
巨大な建物、すそ野の広大な森。
圧巻だった。
夕なずみ、キルト大聖堂も森も赤々と照らし出されている。
「あそこだ!」
俺が指さしたキルト大聖堂の想い出の部屋の辺り。
ビガアッ。
雷の閃光かと思った。
俺の体となったハルミ=ピンクの目はアンドロイドだけに優れている。
窓にあふれた光は、チカチカしたかと思えば五芒星を描いて西の空へ飛び出した。
別の窓からは、六芒星を描いて東の空へと導かれた。
その悪魔の光は、何度も瞬き、森の向こうへ散り散り去った。
俺達は、ただ見つめていた。
「まさに、レイの読み通りだったな」
クロスは、ここを知らなかったようだ。
「まさか、ここが元凶だったとはな。キルト大聖堂で異世界の魂が召喚され、誰かの肉体に封じ込められ、星としてばらまかれる」
ミマイは、はっと短く笑った。
この世界の秘密は、キルト大聖堂にあった。
この三年の旅路の果てに得たのは、罠のような答えだった。
***
「それで、レイはどうしたい? 今なら三人でキルト大聖堂を破壊するのはたやすいが」
ミマイは、俺の左手をぎゅっと握った。
俺がむくちゃんを探しているのを知っての確認だ。
「それとも、この大聖堂と共に新世界を創造するか? 今の我々なら十分可能だ」
クロスは、すがる眼差しを俺に向けた。
二つの問いは、破壊と創造の真逆に感じる。
だが、俺にとっては同じだ。
「俺は、あの時別れたむくちゃんを探したい。元気なむくちゃんと会って、抱きしめたい。どんな世界かって? 平和に決まっている。俺の想いとは、家族皆で楽しく暮らしたい!」
***
かつての俺なら、戦場で立ち尽くしていた。
しかし、今は違う。
ミマイとクロスと共に、この世界を切り抜けて来た俺だ。
俺は、二人の視線をしっかと受け止めた。
俺の胸、俺の心に、懐かしい家庭が描かれている。
救世主としても、この世界の平和と俺の家族の幸福を具現化すればいい。
「ミマイ、クロス、俺の想いなのだが……」
ヒュウイ。
「あ、あなたは……! 何故、ここに?」
俺は、三年振りの不思議にどきりとした。
フハハハハ……。
あの大司教が、高笑いと共に現れたのだ。
***
大司教は、たくましい髭を触り、すうっと深く呼吸した。
風が吹き荒れ、大司教の衣服もはためいた。
バッ。
大司教は腕を伸ばすと、掌にある邪眼が開いた。
「いね! 次元を渡る悪魔らよ! この世界から消えよ!」
カアアアア……。
足元に突如として魔法陣が展開し、俺達は赤い光に包まれた。
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