PS04 庇うなミマイ

――PS04 キミのタタカイとハイタイ――


『はなしてください』

「おお、むくちゃん、ごめんよ。でも、これってショックを受けないか?」


『だいじょうぶですよ』

「クロスか……。俺が何かできる相手には思えない。戦場の向こうにいるのに、人間界の三メートルかって程どーんと背が高くて、プラチナに輝く体に魔法の大剣振り回して神軍の勝利を約束している」


 氷柱。

 ビキーン、ビキーン。

 竜巻。

 ゴゴウグゴウ。

 炎球。

 ボッボボボウ。


 むくちゃんは、呟いた。


『ハルマゲドンです』


「おお、そうか、伝説の戦いな。で、何でここに来ちゃったの? あ、引かれて呼ばれてじゃじゃじゃじゃーんか」

「レイ、気をゆるめないで!」


 不意にクロスの目がこちらを向いた。


  ***


 緊張が走る。

 神の中の神が、こちらを向いたのだから。

 戦場の向こうからなのに、美家族キラー光線を投げ掛けて来た。


「……」


 俺は、咄嗟の事で何もできなかった。


「逃げろ!」


 その一言も出なかった。

 どうやらクロスの大剣には自然界のものを宿す力があるようだ。

 確実に俺達に向かって、遠方からでも大剣を振り下ろされた。

 神軍のリーダー的存在なのに、破壊の化身になっていた。


 ……グオガアー。

 風、炎、水、雷、プラチナトルネード……!


  ***


 俺は、まだここに来たばかり。

 俺は、何も分からない。

 俺は、何も……救世主になれだなんて、成し遂げていない。

 プラチナトルネードは目の前まで来た。


 バー。


 あれは、トラックのけたたましいクラクションが迫った時だ。


「最高のファミリーデイに死ぬのか?」


 同じ事を考えた。

 

「俺のファミリーを消す気か?」


 重い瞼をぎゅっと瞑った。


  ***


「……レイ。ほら、目を開いていなさいよ」


 再びローブの奥に顔を隠したミマイが俺を見ている気がした。

 ぱっと目を開けるとミマイが揺れる大地を足でつかんで、両手を俺とむくちゃんの前に広げた。


「止めろ! ミマイが受ける必要はないだろう」

『ミマイまーま』


「ほら、見てな。守るって言うのはこうするんだ。レイ、死んではいけないよ。レイは救世主なんだから」


 俺は、一ミリたりともミマイを守っていないじゃないか。


「そんな、今の命を投げ出してもいいなんて顔。するんじゃないよ」


  ***


「ミマイー!」

『ばーぶっ』


 ミマイがプラチナトルネードを受け始めた瞬間、レイは沢山のスナップをミマイとの想い出の中から出した。

 高校の空手部での出逢い。

 父親の殺人事件への協力。

 その敵との戦い。

 そして、かけがえのないむくちゃんの誕生。


「グングニル……。逆五芒星よ、我に力を与え給え!」

『ばーっぶ。ごぼうせいよ、ちからをください』


 このプラチナトルネードが、まさかの想いの具現化につながった。

 レイの右手から、逆五芒星が、むくの左手からも五芒星の魔法陣がどんっと広がり、ピンクの二重攻撃となった。

 だが、この戦いは、負けた……。


  ***


「おー、ここはどこかな?」


 つーんとした夜中の森に倒れていた所、一番に目覚めたのは、俺だった。


「ミマイ……。大丈夫か?」


 離れた所にミマイがいた。

 むくちゃん、むくちゃんは?

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