5. 執着


良いところもあるし結局好きだから別れられないからって周りはよく言う。


私の場合はもっとひどい。




「可愛いよ、すみれ」


はるとのが、私の中を強くつく。

敏感な部分を手で弄りながら、胸の先端を摘む。


何度も果てた。

はるととはデートで一日二回はした。

会うたびにエッチしてた。


でもたまに、急にキスさえも嫌になる。

顔も見たくなくなる。

別れたくなる。

1人になりたくなる。



“こんなに我慢したのに今別れたら努力が無駄になる。”

意地が執着に変わっていた。

三年目、四年目、五年目



でもはるとといて、嫌なことばかりじゃなかった。

真面目で頭の良いはるとは、勉強を教えてくれる。

たくさん服を買ってくれる。

絵やおしゃれを褒めてくれる。

だから頑張れた部分はたくさんあった。


とにかく、はるとは私とは違って、私のことを猛烈に好きでいてくれた。いつでも応援してくれた。


それがいつしか重いに変わった。

でも、一度もほかの人に目移りすることもなかった。

それなりに、モテたけどはるとに依存、執着していた。


高校を卒業した。


小さい頃から絵を描くのが好きで、特に服のデザインが好きだったけど、短大に入った。


そして、私は夏から地元を離れ一人暮らしをすることになった。


私は、はるとのお母さんが自分のせいで精神病になったんじゃないかとずっと悩んでいたし、このまま付き合い続けられるのか。


愛 嘘 情 心の偏り 感情的に進む恋愛


全部、地元に置き去りにしたかった。

大好きな夏、これが、はるとと過ごす最後の夏。


だから、引っ越す前に夜、大好きな海で、


「ずっと怖くて聞けなかった。はるとのお母さん、私のせいで精神病になったんじゃないかって。はるとも私のこと嫌いになればいいと思っていた。」




「お母さんが精神病になったのは、すみれのせいじゃないよ。」


拍子抜けした。

五年間ずっと悩んでた。縛られていた。自分のせいだとずっと責めていた。


「仕事がうまくいかなくて、それでなったんだ、全くすみれのせいではない。」


「そう、、」


「それに、嫌いになるなんて嫌だ。俺は、離れていてもずっと好きでいるよ」



結局、別れられなかった。

何も置き去りにはできなかった。


一人暮らしを始めて、レストランでアルバイトした。


たまにはるとが泊まりに来た。


ご飯を作ったら何でも美味しいって言ってくれるし、お皿だって洗う。

いやいやだけど頼めば掃除もする。


でも一緒に過ごしていても、趣味ばかり。

何か話たくても、話が合わない。


そんな中、バイト先で一個上の先輩、れんと出会う。

まだこの頃は、さん 付けで呼んでいた。

はるとがいたし、正直どうでもよかったけど

バイトのシフトが被ると少し嬉しいくらい。


あまりシフトが被る日はなかったけど、10月の雨が降る日、

ちょうど同じ時間に上がった。


れんは傘を持っていなかった。


「れんさん、駅まで一緒に帰りませんか?」

一言声をかけた。


「え?でも彼氏いるんでしょ?申し訳ない」

「いいんです。」


隣に並ぶと、すごく背が高くて

オシャレで、なんだかいい匂いがした。

爽やかだけど甘い匂い。

傘の中は狭くて、何度もどこかがぶつかる。

その度に、なんだか可笑しくて、笑ってしまった。

はるとなら、なんで笑ってるの?って言うけど、れんは、一緒に笑ってくれる。

なんだか、久しぶりに楽しかった。

久しぶりにこんなに笑った。

一緒に帰っているだけなのに。


「じゃあ、ありがとう」


そう言ってるれんは体の半分が濡れていた。


「傘の意味、なかったですね、ごめんなさい。」

「いや、助かった。ありがとう。」

「いえいえ、じゃあ、また。」

「じゃあね。」


地下鉄の階段を降りて行くれんを見ていた。

傘は1人では広過ぎる。

れんの温もりが逃げてった。


家に着いて、早速LINEした


「雨、大丈夫でしたか?風邪引いてませんか?」

送ろうとしたその時、


「傘入れてくれてありがとうねー」


LINEがきた。

こっちが送ろうとしていたのに、待っていましたみたいに既読がついてしまい、恥ずかしかった。


「私もちょうどLINEしようとしてました笑

濡れてましたけど風邪ひいていませんか」


「俺は大丈夫!優しいんだね」


「そんなことないですよ優しいのは、れんさんです。」



それがキッカケでたまにLINEするようになった。


そして、11月。

遠距離ではるととなかなか会えなくて、うまくいっていなかった。


私ははるととのことを、れんに相談するようになっていた。

いい迷惑だっただろうし、相当なイメージダウンだったはず。


はるとは、受験勉強のためにバイトを辞めたからお金もなくて、デート先も調べるわけでもなく、

「だって俺、わからないし」

私がいつもリードしていて、つまらなかった。

たまにのデートなのに。


ある日、はるとが東京の研修旅行に行った帰りに、私の家に寄って泊まる約束をした。

お金はないけれど、地下アイドルに使いまくっていた。


趣味に干渉するつもりはないし、好きではないし、正直理解できなくてずっと嫌だった。

耐えられなかったのは、趣味を強要してくることだった。

興味がないものにいちいち反応しなくてはならないストレスが爆発した。

はるとも、理解されないストレスが爆発したのか、LINEで喧嘩になった。




れんに電話した。


「もしもし?れん、彼氏と喧嘩した。明日飲みに行こう」

「は?笑 まじか」

「うん」

「でもその日、彼氏来るんじゃないの?」

「会わないからいい」

「わかった」



そうして、れんと飲みに行った。


はるとが来る時間は、夜の8時。一応、それまでには帰るつもり。


まだ、執着していた。



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