4. 歪み

私の答えも、秘密も、2人の逃げも知らない周りからは〝爽やかカップル〟で評判が良かった。

ただの歪みでしかないはずなのに。

私はずっと歪みしか感じなかった。


手作り弁当を作ったり、お菓子を作ったり、彼女らしいことをした。

でも、好きというより、好かれたいから。


色白が好きなはるとのために、美白を徹底して、可愛い服を着て、化粧も覚えた。

言葉遣いも女の子らしくした。

はると最優先で行動した。


歪みでしかなかった。

自分なんていなかった。

あるのは責任、縛り、歪み、後悔


2年が経つ頃、高校受験を控えていた。

毎朝四時に、はるとは家に来た。

2人でエッチをした。

受験勉強で朝しか会えなかったから。

そんな生活が二ヶ月続いて、はるとは偏差値の良い高校に。私は、頭は悪くないにも関わらず、偏差値の低い女子高校に。


このころから、私ははるとのモノを舐めるのが嫌で仕方なかった。

だから、生で中に入れてもらって、外に出してもらってた。

家でも、外でもした。


コンドームを買って欲しかった。

乱暴だから毎回血が出た。

はるとはいつも強引で

嫌で嫌で、生理がくるか不安で、


どうして大切にしてくれないの


そればかりだった。

はるとのせいにばかり。


そして

あの事件だけじゃなかった。

私を苦しめたものは。


中学三年の秋、学校祭の催しで、はるとと同じチームで楽器演奏をすることになった。

ドラムが得意なはるとは、私に一生懸命教えてくれた。でも苦手な私はそんなすぐできるわけでなく、できない自分に腹が立っていた。そんな自分より腹を立ててたのは、はると。

できない私に、ドラムスティックで、太ももを強く刺したりした。


「痛い」

何度も言ったし、我慢してたけど、やめてくれなかった。

青タンまでできて、我慢できなくなって、みんなの前で泣いてしまった。

ハッとしたのか、はるとはすごい謝ってきた。

私にベタ惚れで、優しくかったはると。


実は、はるとは、浮気もしていた。

ネットで知り合った女の子と付き合っていたことを忘れて、私に告白し、2ヶ月くらい過ぎてから、その子を振ったらしい。

それを突然言われた。


だから、それ以来私は、はるとが信用できなくなった。


そして中学の卒業式。

はるとの母親は、精神病になり来れなかった。


私のせいだ


友達と一緒に居たかったけど、

はるとと一緒に帰った。

はるとがほっとけなかったというより、

こんなことをしてしまったんだから、責任を負わなければならない。

私は自分を自分で縛り付けていた。


高校に入ると、喧嘩もすごく増えて、その時にドラムスティックの話をすると、

「辛くなるからやめて」

と、逃げるだけだった。


高校1年生の春、我慢できなくなり別れた。

喧嘩が何日も続き2人とも歪んだ関係に疲れていた。

「別れる?」

「うん…」

「わかった、さよなら。」

「まさか俺から振ると思わなかったよ」


どっちが振るとか、アホらしい。

でも、これも許せなかった。


はるとについて許せないことが3つになった。

お母さん、ドラムスティック、振られたこと




もう疲れて、許せないはずなのに、

はるとがいないと考えると涙が止まらなかった。


歪みはもう歪みじゃなくて。

好かれていた自分しか好きじゃないし

好かれている自分でいることがスタンダードで、

はるとがいないと自分を保てなくなっていた。

壊れるのが怖かった。


次の日、はるとが好きな香水をつけて、会いたいと言った。

はるとは私をみた瞬間、力いっぱい抱きしめて

「ごめん、ごめん…俺も別れたくない」

私も泣いた


ああ、壊れなくて済む


安心した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る