HARTS-144 『霊柩』


UVL:7

SL:9

ML:3

AL:1



《管理方法》

 HARTS-144-aはエンバーミングを施し、低温維持が可能な施設において腐敗が進まぬよう注意して保存すること。

 HARTS-144-aの状態維持のため定期的な検査が必要だが、その際HARTS-144-aが及ぼす無形質性パラノイア障害を防止するため、SPG適性値が[??]以上の職員がこれを執り行うのは禁止されています。また、半径10m以内へのSPG適性の高い職員の立ち入りは避けて下さい。

 HARTS-144-bは、温度・湿度を管理できる施設で保管して下さい。HARTS-144-bの構造に関しては目下研究中であるため、[検閲済み]回路の状態を保持する為、施設への入室は制限され、入室にはレベル3以上の職員の許可を必要とします。


《説明》

 HARTS-144の構成は、棺状の物体『HARTS-144-b』と、その内部に収容されていた人型遺物『HARTS-144-a』に分かれる。HARTS-144はHARTS-001,002と同様、固形状テレクステロン導体で構成された棺型の遺物HARTS-144-bの内部に、ヒト型遺物HARTS-144-aが収容されている。

 HARTS-144-bはHARTS-002にみられるコフィン型とは異なり、縦2,1m、横60cmの長方形で、上蓋に小窓は設けられておらず、また装飾はほとんどなされていない。

 放射性炭素年代測定によると、HARTS-144-b は[??]世紀頃に製造されたことが判明している。

 HARTS-144-aの概要はHARTS-001と同様、10代の茶髪碧眼で西洋的な面立ちの少女の形態をとり、身長は155cm、体重は40kgという体躯である。

 HARTS-144-aは19[??]年に行った科学的調査によって既に脳死・心停止していることが判明し、その後の解剖調査等では、検体が推定年齢14歳の西ユーラシア系人種(Y染色体ハプログループI)で、また生前の栄養状態が悪かったことなどが判明した。また解剖学上、死後それほど時間は経過していない(せいぜい死後数時間程度)との結果が出たものの、HARTS-144-bの性質上、死亡推定時期には有意な根拠がないと考えられる。

 HARTS-144が発見されたのは18[??]年の事で、[削除済み]国、[削除済み]地域に位置する[削除済み]山地の山の中腹にて、炭鉱掘削の中途発見された。その際、番頭の指揮のもとHARTS-144-bの上蓋が開かれたが、HARTS-144-aを目撃した坑夫達はこれを畏怖嫌厭し、HARTS-144は間もなく付近の宗教施設に奉納され、その後財団職員によって回収された。またHARTS-144-aの姿を直接目撃した坑夫のうち何人かにパラノイア障害と思しき症状が発生したとの情報があるが、現状HARTS-144との因果関係は不明である。

 坑夫達によってHARTS-144-bが開けられた際、HARTS-144-aの状態に変化はなかったとされるため、HARTS-144-aはこれよりも前にテレクステロン供給に障害をきたし冬眠状態を維持できず死亡していたものと思われる。

 HARTS-144-bの内容物HARTS-144-b-pは、HARTS-002内部に満たされている液体と同様のものと考えられており、開封時の酸素との接触によって若干の形質変化は認められるものの、それらは[???]と[??]と[削除済み]の化合物であるとの研究結果が出ている。

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