老梅
八田藍京
一本の梅の木
荒れた畑に一本の梅の木。
春になれば白い花が枝を賑わす。
木の棒で枝を叩く子どもが注意されると舌打ちして逃げる。
子どもの頃から眺めている梅の木。
もう何十年経つだろう。
農道が町道に変わり車が通る。
道にはみ出た枝が切られてしまう。
太い幹から小枝が出た状態。
咲く花が少なくなり梅の実もない。
周りは住宅が増え、太陽パネルも設置された。
時代の流れは仕方ないものなのか。
ある日、自治体が梅の木を調べると数百年の貴重な木と知る。
土地の持ち主はすでに他界。
自治体が保管することになり、町の名物として挙げることにした。
本来は伐採。今は町おこしの話題の材料。
人の厭らしさが垣間見られた。
側には小さな記念館。売店も作られた。
梅の木、太陽パネル、売店。何とも不思議な空間だ。
しかし、梅の木は枯れ始める。
人間の愚かさに嫌気を差したのだろうか。
その後、建物には人もなく荒地にパネルが光っているだけだった。
老梅 八田藍京 @mamitasu90
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