第6話

とりあえず、何が出来る?何をすればいい?

警察に行くか?でもなんて?

知らない子と一緒にいます。誘拐したかも?って言うのか?

「いやいや無理無理!」首を激しく左右に振ると再びこめかみに痛みが襲ってきた。

「つっ」とりあえず傷の確認が先だ。さっき玄関の横にユニットバスがあった。鏡もあるだろう。

とってつけたような鏡だったが傷の確認には十分だ。

多少腫れてはいるが出血はほとんどない。しかも半分乾いてきている。

とりあえず横に掛かっていた白いタオルでこめかみの傷を拭う。

タオルに擦れたような血の跡がつくが、たいした量じゃない。

傷もたいしたことはない。どちらかというと切り傷というよりタンコブのような感じだ。

まあ問題ないだろう。と思った瞬間、

「パーパー。」「うわっ。」傷の確認に意識を注いでいると突然後ろから声がした。

子供が起きてきたのだ。目をこすりこすり近寄ってくる。

やけにニコニコしている。

随分と愛想のいい子だ。改めて見るとどうだろう?やはり年齢は2歳から3歳の間ぐらいだろうか。声の雰囲気は見た目より更に幼い。

「ごあん。」ごあん?ん、ごはんか?「お腹がすいているのか?」

何食わせればいいんだ?パイパイとかミルクとか言わないところをみると普通の食べ物でいいのか?良くわからん。

「ちょっと待ってろ。」

冷蔵庫を開けてみるが食い物はない。あるのはミネラルウォーターだけだ。

買い物に行くしかなさそうだ。子供は?まさか置いていくわけにもいくまい。

子供を抱えて玄関に向かう。人見知りしない性格なのだろうか、全く嫌なそぶりをみせずに抱きついてくる。

「あ、」玄関であることに気づいた。子供の靴がない。ということは俺が抱きかかえてこの部屋に来たということか?ますます自分に対する疑念が深まる。

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