或る愛の囁き 貴方の手

どうぞ傍に

どうぞ傍にいてくださいね

私が空から見下ろすときも

どうぞ此の手を握っていて



きっと私は

貴方の手を放さなければならないのでせう

きっと私は

貴方の目をそっと、他所に遣らねばならぬのでせう

貴方の頭の上

もう二、三歩届かぬ場所から

そっと両手を組んで祈るのが良いのでせう

でもそれができないのです

我が儘なあまり、できないのです



私の貴方

その大きな手が

他の誰かを繋ぐなんて嫌

私がいなくなったあとでも嫌

私がいない貴方の隣は

空でなくてはなりません

誰がいたとしても嫌

たとへ誰だとしても嫌



泣いてください

ふと私を想って

いつだって口遊んでください

私を悼む言葉を

私は心を痛めながらそれを歓び

何処からだって貴方を見詰めるのです



貴方の手が

私のものでなければ嫌

貴方の隣に

私がいなければ嫌

私でなければ嫌

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