庭の隅の囁き

貴方はきっと知らないのでせう。

私の名前も知らないのでせう。

私の名前も知らないで

ただ邪魔だからと棄て去るのでせう。


白き花弁は頭を垂れて

ただひたむきにその時を待つのです。


※※※


さようなら愛しき日よ。

私の声はもう潰れ果てた。

今はご覧、そらあのように

種を吐くことさえ叶わずに

終えていった仲間達よ。

せめてこの地を踏みたいと

私は自ら楔を解く。

せめて、と祈り

声もなく祈り……。


※※※


いつの頃からだったろうか。

最早誰も、此所を訪うこともなく

ただ朽ち行く理想郷よ。

蔓薔薇が絡み

主なき冠を作りては、

幼き雑草が頭を垂れるのみ。

その足元では

打ち棄てられた残骸が積もりて、

白き花の頭などは

やはり垂れているのでせう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る