非童貞。
「…先ず、さっきの化け物についてお聞きしたいのですが、あの化け物は人間の言葉を理解出来るのでしょうか?」
「…いや、無理じゃな。さっきの化け物は“ビッグイーター”と言うて、口と消化器官の化け物じゃ。
そもそも耳も目も無く、舌先にある匂いを感じる器官で生き物を捜して襲う。」
「…崖を飛び越えて追って来たのですが…。」
「それは単純に
獲物によっては同族同士で強力し合うぐらいの知能はあるしの…。」
なる程。ならば、俺の考察が正しい可能性は少し上がるな。
「…では、レッサーヴァンパイアに、種を越えて会話を成立させる力を授けるのは可能ですか?」
「無論、可能じゃ。
…じゃが、残念ながらレッサーヴァンパイアに戯れに授ける様なレベルの術では無い。
お前さんを作った者が、余程酔狂でも無い限り、劣化した能力しかないレッサーヴァンパイアに与えるには、惜しい力じゃ。」
その話を聞いて、疑問が一つ解消される。
タナス老から会話が成立している事の疑問点を聞いてから、口の動きを見ていたのだが、明らかに口の動きと会話内容が違った。
認識している内容と、口に出している音で齟齬が有ったのだ。
つまり、会話が成立しているのは、タナス老の語る術で間違いないだろう。
「…僕の口の動きを見ていただけますか?
会話の内容と齟齬は有りませんか?」
「…確かに…!
…しかし何故レッサーヴァンパイアなんぞにその力を…。」
そう、
「…会話が成立しているのは、その術のおかげで間違いないかと思います。
さき程ビッグイーターについてお聞きしましたが、あのビッグイーターは僕の叫ぶ声に反応していたのですよ。薄く笑う様に…。」
「…!」
そう、
俺の助けてと言う声を。
「…次に聞きたいのは、この世界の貞操観念についてです。
学生の婚前交渉は一般的ですか?」
「…また何を聞いておるんじゃ貴様…。」
タナス老は呆れる様に俺を見るが、俺はその目を真剣に見つめる。
「…一般的では無い。
まぁ、同年代でも、戦いを生業にする者や、それを相手する娼舘の女たちならば、その限りでは無いがの。
基本的には結婚後が一般的で、学生が婚前交渉を行うとは考えられまい。」
良し!
それを聞いた俺は内心でガッツポーズをする。
これで俺の考察の最低限の前提条件は満たせたのだ。
俺が元居た世界でも、ユダヤ教圏内では婚前交渉は有り得ない。この世界の性的概念もそれに符合した物なのだろう。
「…次に聞きたいのは、異世界転生についてです。
先程の話から、可能性が低い事は理解していますが、100%不可能なのですか?」
「…不可能では無いの。
これまで幾つか異世界からの召還儀式が行われたと言う事実は存在しとる。」
ここにきて、俺の考察が正しい可能性は更に高く成った。
超絶イケメンは、考察までも超絶イケメンなのだ。
「最後に聞きたいのですが、強力な再生能力と高い知性の維持。
更に種を越えた意志疎通を可能としたヴァンパイアを造る場合に対象が―
非童貞だったらどうなります?」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………高い知性と再生能力、種を越えた意志疎通が可能なレッサーヴァンパイアに成るじゃろうな…。」
ジジイはそう呟いて俺を凝視する。
なんだその目は。やはりイケメンが羨ましいのか。
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