微妙な空気
「…」 「…」
二人の間には微妙な空気が流れている。
「…」 「…」
ジジイはこちらをじっと見ている。
「…」 「…」
仲間にしますか?
はい
いいえ←
「…」 「…」
ジジイはまだこっちを見ている。
「…」 「…」
………まさか……!
分かった!いや、今まで何故気が付かなかったのか…!
このジジイは
いや、この歳だ…。
おーい!みんなー!
このジジイ、童「ワシは童貞ではないぞ。」童貞じゃないってさ。みんな帰ろうぜ!
「まったく…下らん事ばかり考えおって…。」
そう言ってジジイは頭を振り、俺に向き直った。
「…非童貞、非処女はヴァンパイアにはならず、レッサーヴァンパイアに成るか…。
確かにこの世界の者ならば、学生が経験済みじゃとは思いもよらまいて。
手違いの可能性は確かにあるのう…。
しかし、お前さんは何故そんな事を知っておる?
この世界でもあまり流布しとる話では無いぞ?
それに、18歳の学生じゃったと言っておったろう。
お前さんの世界では学生結婚が一般的なのか?」
そう、俺の気付いた可能性。
それは、
タナス老の語った、『レッサーヴァンパイアにしては特別』と言う話も、『元々レッサーヴァンパイアにするつもりは無かった』と考えれば違和感は無い。
「…僕の居た世界には、確かにヴァンパイア等の異形は居ません。
ですが、それを取り扱った伝記や物語りはあるんですよ。それも恐らく、この世界よりも沢山。
僕がレッサーヴァンパイアの成り立ちを知ったのも、そういった物語りの幾つかに、そういった描写がされていたからです。
まぁ、それでも幾つか分からない点が残っていますが…。
婚前交渉に関しては、避妊具の発展や、文化的違いから来るもので、学生結婚はして居ません。モテるので。」
まぁ、漫画やラノベ、携帯小説からの知識である。
そんな役に立ちそうに無い知識すら役立ててしまう俺のイケメンぶりは、既に南半球も駆け抜ける頃だろう。
しかし―
「…お前さんも気付いておるじゃろうが、それ等を前提にしても、“その可能性もある”程度のモノじゃ。
お前さんが幼児化した理由が抜けておるし、依然として“記憶の改竄”が最も可能性としては高いんじゃぞ?」
そう―
そうなのである。これは、“一つの可能性”の話でしかなく、決して“答え”では無いのだ。
結論はここでは出ない。
…しかし、それでも構わない。
もし、あのまま死んでいたら、可能性は何一つ残らなかったのだから。
「ええ、仰る通りだと思います。でも、今の僕には十分な“一つの可能性”です…」
そう言って俺はタナス老に向き直る。
「…タナス老、僕を助けて下さって本当にありがとうございました。」
そこで初めて俺はタナス老にお礼を言った。
心からの感謝を込めて―
「…」 「…」
二人の間に微妙な空気が流れている。
「…」 「…」
軈て、此方を見つめていたタナス老は―
「……ブッ!はは!ははは!
このタイミングでか?
このタイミングで今更礼を言うとはの!
ははは!
いや、面白い奴じゃ!
あながち異世界から来たと言うのも本当かものぅ!」
そう言って吹き出す様に笑った。
「まぁ、これ以上話しても推論しか出ませんしね。結局は僕をレッサーヴァンパイアにした人に話を聞かないと結論は出ませんから。」
「ははは!いや、正にその通りじゃ!
これ以上の話に意味は無かろうて!
ははは!」
タナス老は一頻り笑い終えると、俺に向き合いこう言った。
「気に入ったぞ、小僧!
貴様を我が弟子にしてやろう!
ワシの“ラファガ流
こうして、俺はこの世界で、ひとりぼっちでは無くなったのだ…。
「ン拒否するぅぅぅっ!!」
「なんじゃと!?」
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