第23話 西郷丼

 

 雨がふっている。

 春の雨はありがたい。地上に舞う花粉を叩き落としてくれる。

 だが同時に、沸き立つような想像の翼も濡らし、ただぼんやりとさせる。

 サタサタサタと暑くもなく寒くもなく、寥々れうれうたる梅雨の悲しさもない。


 春の雨。春の雨。春雨はるさめっ!!! は、もう使っている……





 ========プツン========




 みなさんこんにちは。一分間クッキングのお時間です。

 料理小説でこのパターンは逆に新しい。ありそうでなかった斬新企画。

 安易だから誰も手を出さなかったわけでは決してありません。


 


 それでは早速、多恵ちゃん先生、お料理のほうよろしくお願いします。

 今回は西郷せごどんということですが、全国には公式の駅弁の他にも各地にさまざまな西郷丼が存在します。みなさんダジャレがお好きなんですね。


 では大河ドラマの大人気にあやかって、オリジナル西郷丼を作ってみましょう。




 まずはお料理で大切な下ごしらえ。

 じっくりと西郷隆盛を勉強していきます。



  西郷隆盛(1828―1877、49歳没)


 ・薩摩藩(鹿児島県)の下級武士の長男として生まれる。

 ・大久保利通らと共に勉学に励む。

 ・藩主、島津しまづ斉彬なりあきらに取り立てられ、江戸行き。

 ・藩主の急死にともなう政情変化で島流し。(奄美大島)

 ・生麦事件を発端とした薩英戦争が起こり、鹿児島に帰郷。

 ・島津しまづ久光ひさみつとの対立から島流し。(2回目)

 ・藩士たちの直訴により島流しをとかれ、政治の表舞台へ復帰。


 ・1866年 薩長同盟。

 ・1867年 大政奉還。

 ・1868年 戊辰ぼしん戦争。同年、江戸城の無血開城。

 ・1873年 陸軍大将となるも征韓論で対立し下野げや

 ・1877年 西南戦争で明治政府に敗れ、割腹自殺。


 【今日のポイント】


 まさに明治政府樹立の立役者である西郷隆盛が、最後はその明治政府に滅ぼされて自害するところが悲劇的です。ですが特筆すべきはその人間力。人々に愛され2度のの島流しにあったにも関わらず生還を果たし、最後は対立した明治政府からも死後、大赦たいしゃにより名誉を回復され、正三位しょうさんみを追贈されています。

 


 【余談】


 ・僧侶である月照(男性)と心中未遂事件を起こす。(男色?)

 ・犬をかわいがり、鰻屋に寄った際は犬にも人間と同等に一人前食べさせた。

 ・生涯三度の結婚をし、二度目は島流しされた奄美大島で愛加那アイカナ島妻アンゴとして迎え一男一女をもうけるも、妻を本土に連れ帰ってはならないとのおきてによりやむなく島に残した。

 ・脂身のついた豚肉が大好物だった。(黒豚)

 ・死後、火星の大接近にともない庶民の間で西郷星であると大騒ぎになった。

 ・思想『敬天愛人』『児孫のために美田を買わず』『急速は事を破り、寧耐は事を成す』など。


 


 はぃっ! 素材の下準備が終わりました。

 人生にレシピはない。歴史は眺める角度により、その姿を変える。

 みなさんがそれぞれ、オリジナルの西郷丼を作られることを期待しています。


 一分間クッキングでした。





 ========プツン========





 あれ? どうしたの多恵ちゃん? 芋焼酎? 焼酎好きだね。


 ふむふむ。なるほど。これは斬新だっ!





 ※ レシピ


 薩摩藩だけにサツマイモの拍子木切りを束にしてグラスに


 冷たいお水、冷やした芋焼酎を順に注ぎバー・スプーンで軽くステアっ!





 ありそうでなかった芋割りの芋焼酎。だれも考えなかった、ネット検索しても出てこないオリジナル。もちろんお湯割りでもOK!



 アイデアはこんなところに…………苦しいのは僕も一緒だよ、多恵ちゃんっ!!!




 










 



 

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