第20話 ジェラシーの鶏☆肉じゃが


『竹内宗様、最近そちらのお部屋から話し声が聞こえると他の入居者様からの連絡がありました。当館は同居自由でありますので問題はありませんが、入居される人数が増えた場合、家賃修正などが必要になりますので至急ご連絡くださいますようお願い申し上げます。 P.S. 心配してたけど彼女できたの? おばちゃん嬉しいです』


 ドアポストにそんな手紙が入っていた。オカルトじゃあるまいしどういうこと?

 このアパートは独身の男しかいない。嫉妬されたか。でもなんだ話し声って……

 手紙を半分に折り、畳に寝転んだ。死期が近いから四季はもう楽しめない。春はあけぼの、YO♪ YO♪ 白くなりゆく山際。いまこの時空ときをただ楽しもう。

 大家さんは、気さくでめんどうみの良い人だが……金にはシビアだ。

 下手に弁解すれば、やぶ蛇になる。


 国勢調査が来たら記入はどうする? 名前はOK。年齢は謎。

 そもそも日本国籍はあるのか? 

 妄想なのだから、本当は国際指名手配のロシアスパイかもしれない。


「ばかばかしい。ねぇ、多恵ちゃん…………」

 俺は振り返り、台所にいる多恵ちゃんに声をかけ、言葉につまった。


 彼女の背中が怒っている。


 それはそうなのだ。むか~しむかし19話で勝手に女性を家に泊め、さらに台所で料理まで作らせたのだ。これで怒らない彼女はいない……


 だけど多恵ちゃんは、あくまで理想の彼女ひと

 今回はその嫉妬の炎メラメラのジェラシーをスパイスに変えて、料理を作るのだ。




 ※ 材料


 鶏もも肉、鶏の砂肝(砂ずり)、じゃがいも、ネギ(青い部分と白い部分)。


 出し汁、生姜、酒、みりん、砂糖、しょうゆ。




 ※ レシピ


 〇ジャガイモの皮をむき好みの大きさに切って面取り。水にさらす(10分)

 

 〇砂肝を開き、さらに細かく包丁で切れ込みを入れる。(柔らかくするため)


 〇ネギを白い部分は筒切り。青い部分はみじん切りに。



 今回はお鍋とフライパンの平行作業です。



 お鍋:

 油を熱し鶏肉を炒めたら、ジャガイモとネギ(白)を加えさらに炒める。

 出し汁を加え煮立ったらアクを取り、酒、しょうゆ、みりんで味付け、中火。



 フライパン:

 砂肝を炒めます。火が通ったらネギ(青)を入れさらに炒める。

 生姜(しぼり汁)、酒、しょうゆ、砂糖で味付けして弱火。



 どうやら中華飯店の大火力から、徐々に中火、弱火に怒りが収まった模様。



【今回のポイント】

 甘い肉じゃではなく大人味を狙います。甘みのでる玉葱、にんじんはいれません。

 砂肝は食感が固すぎては調和がとれないので、コリコリより柔らかめに仕上げる。



 双方10分ほど煮込み、

 フライパンの煮汁がなくなったら火を止め、

 鍋の残り水分を見極めて砂肝を加えて全体を混ぜ合わせ火を止める。





 ※ 実食


 相手も鶏料理だったので……もしかして同じ鶏料理で対抗?

 これは冷ましてから食べるところがミソ……冷たい料理が怖いっ! 怖いよっ!

 飲み物は……飲み物は……飲み物は……

 あれ? 多恵ちゃんが一升瓶を抱えて、座りこんで上目うわめづかいでにらんでる。


 ごめんよ多恵ちゃん。たしかに料理と言いながら最近は居酒屋放浪記みたいになっているからお酒は控えたほうがいいんだけど、この大人味の肉じゃがにお酒がないんじゃ辛いよ。意地悪しないでよ。


 ……でも、小柄な多恵ちゃんが大きな一升瓶を抱えてにらむ姿はすごく色っぽい。

 このまましばらくこうしていてもいいかな…………………………あれれ?



 とくっとくっとくっ。



 ……そっか。

 冷たい料理だから、合わせるお酒を人肌ひとはだに温めておいてくれたんだね。


 春はあけぼの、YO♪ YO♪ だけど実際はぁん、まだまだ寒い YEAH♪


 その心づかいマジリスペクト 愛情とポン酒で心もポカポカ  アーーーイ♪





 夫婦めおと日和びよりみたいなオチかと思ったら、


 最後は仕込んでおいたラップだったね、多恵ちゃんっ!


 

 











 





 

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