第12話 仲直りの乾物Braおでん
願わくばこの浅草のアパートに隕石が降り注ぐことを願う。ご近所には甚だ迷惑な話だろうが、独りぼっちの六畳間で、これでも俺は真剣に悩んでいる。
ああ。つまらないことで喧嘩をしてしまった。喧嘩の原因「犯人はおまえだっ!」
「犯人はおまえだっ!」「犯人はおまえだっ!」「犯人はおまえだっ!」ああ。
妄想の中でさえ、理想の女性とさえ、上手くいかない。そもそも、およそ常人には理解しがたいアクロバティックな状況。これじゃそこらに転がってる安い恋愛小説。
【僕は一冊の本だ。】
この書き出しの時点で自分が完全におかしくなっていることに気づくべきだった。
よくよく考えてみれば多恵ちゃんは10話で忘れた飲み物を11話で提供しただけじゃないか。なにより結果的に俺はドラゴンから救われたんだ。
なんとか多恵ちゃんと仲直りしたい。
メロスは走った。じゃあ、わたしも走る。じゃオイラはスタートの合図をするよ。あたいはゴールテープを張る。ヨボヨボ、わしは拍手をするぞい。混濁する意識。
今度は俺が料理を作るよ。君のために。
そして俺は乾物屋に走った。
【提案】
実際問題として鰹節を毎日、削るのは大変なのでそれはスーパーで賄うとしても、その他の乾物については問屋でまとめ買いが節約の秘訣です。
昆布、貝柱、干しシイタケ、干しエビ、イリコなどなど、四人家族ならキロ単位で買った方が質も量もお得。湿気をさけて保存すれば、年一回の買い出しで十分。
乾物Braおでん。秘密があふれかえってそうだけど、分解すればわかります。
※ レシピ
本来のおでんは昆布とかつお節の一番出汁を使い醤油とみりんで味を付けますが、今回は誰も食べたことがないおでんを作りましょう。仲直りのために。
干し貝柱、干しエビ、干しシイタケ、イリコを鍋に入れ、ブランデーを注ぎます。
乾物がもどるまで放置します。大根の下茹でや、こんにゃくの塩もみ&湯通しなどは作る直前にこなしましょう。
【注意】上記の通り、干し貝柱などは非常に高価なので小粒でよいので安く確保しましょう。イリコで汁が濁るのが嫌な場合は、だしこし袋に入れるか代わりに昆布など別のものにしてください。
Braはブランデーの略。乾物臭さをアルコールで飛ばしちゃうやり方ですが、それだけではありません。本来はみりんでつける甘みをブランデーの糖分で代用します。
粋なおでんではなく、ほっこりじゅんわり甘いおでんを目指します。
鍋を中火にかけ、煮込みます。すぐに火を入れるとエネルギーが大きいので危険。(お湯を足し)自然に蒸発させて、仕上げに火を入れて完全にアルコールは飛ばす。
好みの甘さまでお湯で伸ばし、醤油で味を決めて、具材投入。
※ 具材
大根とこんにゃくは外せませんが手間がかかる分、他の具材は入れるだけのものをチョイスしたほうが無難です。今回はゆで卵を作るのが面倒だったので缶詰のうずらの卵と豆腐、練り物を適当に。なにせ、出汁を取った乾物も具になるので。
※ 実食
多恵ちゃんはビール? 俺はそうだなぁやっぱ日本酒にするよ。
ブランデーは忘れて、他のお酒で楽しむのがいい。
うずらの卵ってなんか特別だよね。いいよ、食べて食べて。
俺は貝柱、干しシイタケ、干しエビをちょこちょこつまんでるよ。
大根とこんにゃくは王様だけど、豆腐もいいでしょ? あえて焼き豆腐じゃなくてそのまま。おでんの秘訣は煮立たせないこと。煮込み過ぎないこと。豆腐を美味しく食べるコツと一緒なんだ。
くだらない俺の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます