多恵ちゃんの妄想レシピ

第9話 塩豚のキャンディー煮

　ルゥルル　ルルル　ルゥルルゥ　ルゥルル　ルルル　ルゥルルゥ　

　ルゥルル　ルルル　ルゥルルゥ　　ルゥ　ルゥ　ルゥ　ルゥーー

「こんばんわ、黒柳多恵子です。数々の映画、ドラマでご活躍の俳優、竹内宗さんが本日のお客様です」

「どうも」

　パチパチパチ

「ずいぶんとお久しぶりね」

「そうですね～」

「前回、お出になったのがちょうど１０年まえ。ちょっとそのときのVTRを」

「ですから、ぼかぁ女優のスカートの中に隠れたんですよ。監督は大激怒で……」

「ほぉー」

「……空飛ぶ船にこう～、機械仕掛けの竜が覆いかぶさってですね……」

「へぇー」

「……起きたら馬の生首がごろんって、あれにはびっくりしたなー」

「いったんCMです」

「若いわね～」

「はははっ。若い……ですね」

「そりゃそうよ、あなた。この時が３８歳。映画、論より証拠の名探偵がヒットしてシリーズ化されてその二作目の宣伝も兼ねておいでになったのよね」

「ええ。昨年、シーズン７の完結編を上映することができました。いい作品に出合えたと感謝しています」

「この頃、ちょうど婚約破棄の話題でかなりナーバスになってらしたけど、多恵子の部屋には絶対にでるんだって言ってくれたそうで……」

「マスコミに追いかけられて当時、困惑していたのは確かですね。でも自分の口からファンに直接いうんだって頑固にね……ふふっ、やはり若かったですね」

「それからご結婚はしなかったのよね」

「ええ」

「わたしはあなたより独身のベテランだけど、独身も楽しいわよね」

「えぇ。それも人生の選択だったと思います。実は……」

「……あ、わたしから申し上げるわね。テレビをご覧になってらっしゃる方は大変、驚かれると思います。なんと竹内さんはお医者様から余命宣告を受けられています。

そんな中、今回は番組にお越しい頂きました。お聞きしたとき、なんと言うか……」

「僕の役者人生は、ファンに支えられてここまで来ました。最後は自分の口で……」

「いったんCMです」

　※CM

　１９８６年千葉県生まれ。２０００年東京進出。２０１５年１００店舗達成。

　ベアーズ・ベアーズ・全国展開♪　ベアーズ・ベアーズ・みんなのベア～～ズ♪

「なるほどね～感動しました。神様って罪ね（ぐすん）」

「あの……今ってCM中だったんじゃあ？」

「わたしにはなにも出来ませんが……（ウイィーン・ガシャ・ズボッ）」

　黒柳さんはそのペコロスヘアーからなにかを取り出した。

　※　材料

　豚肉（バラ・肩ロース）

　自然塩

　黒柳さんのキャンディー（メロン味）

　※　レシピ

　本来の塩豚はかたまり肉をそのまま熟成させて旨味をだしますが、今回は4～5cmに切りそろえたものを使います。

　キッチンペーパーに塩をまんべんなくふり、その上に豚肉を並べましょう。

　豚肉の上からも塩をふりかけ（脇にも）キッチンペーパーでサンドします。

　サンドしたままの状態で大判のジップロックで密閉して、冷蔵で二日熟成。

　圧力なべに、塩豚、ネギの青い部分、キャンディー数個を入れ体積の２倍ほどの水を入れ強火。蒸気がでてきたら２０分ほど中火で煮る。

　煮あがったら豚を別皿に移し盛り付け。

　残った煮汁の一部を、塩加減をみて、醤油を足し、煮詰める。

　味が決まったら冷める前に辛子をお好みでとかしてください。（つけだれ）

　※　実食

　黒柳さーーーーーーーーーーーーーーーーんっ！

　って、超冷たかった。会話にならなかったよ。

　この料理も塩豚を使いながら、冷めた角煮みたいなもんだよね。

　ぬっ、メロンの風味が意外にあう。

　なるほど臭み取りのネギは入れたけど、喧嘩するから生姜（しょうが）はあえて入れなかったのか。豚肉の旨味と不思議な甘さを楽しむ料理だね。

　飲み物はジンのソーダ割。甘いつまみには辛口がいいよね。

　しかし……キャンディー数個だすのに、えらく長いコントだったな。

　でも一生懸命、黒柳さんのものまねしてるときチラっと見えた……

　八重歯が可愛かったよ、多恵ちゃんっ！