レッドブレッド

フ「よ、ちょっといいかな?」

グ「んだよ お前が話しかけるなんて」

フ「うちの妹がまた変なこと言ったらしいからさ

  その、悪かったなって」

グ「ああ……そんなのいつものことだろ

  あいつの口の悪さには、もう慣れっこだ」

フ「本当に申し訳ない なんかあいつ

  グロキアのこと目の敵にしてるみたいでさ」

フ「だからちょっとカッとなって言い過ぎちゃうんだと思う

  ほんと悪い奴ではないんだ、許してやってくれ」

グ「俺とあいつの間柄は上司と部下、それ以上の意味はない

  必要以上に好くことも嫌うこともねえよ」

フ「とにかく、本当に申し訳ないと思ってる」


グ「……お前、いつまでケティの世話を焼いてくつもりだ?」

フ「え?」

グ「お前はもう20歳だし、あいつだってもうすぐ成人だ

  いつまでもあいつの後始末してるわけにもいかないだろ」

グ「警備隊の中で生きていくために仕方なかったんだろうけど

  それにしたって、そろそろ独り立ちするべき時なんじゃねえのか?」

フ「う、うーん 俺も最近そういうこと考えてるんだよ

  あんまり付きまとっちゃ、ケティの幸せの邪魔になっちまうし」

フ「でも、今あいつを見守れる家族は、もう俺だけなんだし

  あいつが誰か頼れる人を見つけられるまでは、どうしても見てやりたい」

グ「……少しはてめえ自身の心配をしろよ」

フ「え、あっはは……俺なんか心配するだけ無駄だからさ

  ここ以外でやっていけるほど器用じゃねえし、彼女できる気配すらねえ」

グ「女にモテないのをなんとかしたいなら、尚更だろ

  そこを改善できるのはお前自身だけなんだから」

フ「う……最近みんな俺に厳しくない?」

フ「この前、マクロンにさえ言われたからね

  お兄さん、もうちょっとシャキッとしてくださいって」

グ「まあ、そりゃな」

フ「なんだよ、何が「そりゃな」なんだよ!?

  ったく、いいよなお前は、マクロンいるし」


グ「……やっぱりそう見えるのか」

フ「え、違うのかよ てっきりそういう関係だと」

グ「正直に言うと、迷ってる

  あいつとどう向き合えばいいのか、な」

フ「それはそれは……俺、経験ないからわかんねえけどさ

  お前はあいつのこと、好きじゃないのかよ」

グ「嫌いじゃないんだよ、それだけは確かだ

  嫌いじゃないが、それと愛せるかどうかは別だろ?」

グ「あいつは、あまりにも幼すぎる」

フ「じゃあ、なんで振ってやらないんだ?

  あの子は本気でお前についていく気だぞ、多分」

グ「……何回か言ったことはある

  俺にとってお前は、そういう対象じゃないんだって」

グ「でも、そのたびにあいつは、諦めないって言い張るんだよ

  私が諦めずに傷つくのは、私の勝手でしょ、だとさ」

グ「……あいつのためにも、完全に手を引くべきなんだろうが

  どうにもその踏ん切りがつかずにいるんだよ、情けねえことにな」


フ「……驚いた」

グ「何がだよ」

フ「グロキアがそこまで人のことを気遣えるんだってことに、ね

  もっと、我儘で冷酷な奴かと思ってた」

グ「……前線を退いて、甘ったれになっちまったのかもな

  歳なんて取るべきじゃねえぜ、まったく」

フ「あはは、そりゃあいい、もっと歳をとっちまえばいいのさ

  それにしても 初めてかもな、こんなに長く話したの」

グ「そりゃこんなことお前にしか話せねえからな」

フ「え、信用してくれるのはありがたいけどさ

  そう言われるとなんかちょっと恥ずかしい……」

グ「お前、ほとんど話し相手いないだろ だから噂が広まらずに済む

  信用してるぜ、お前の人見知りをな」

フ「ひっでえ話だ」

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