巣食う者・2

イ「ということで、この写真のトーブっていう人について知りたいんですが

  ケティさん何か知りませんか?」

ケ「まあもちろん知ってはいるわよ、そいつのことは

  でも、期待はしないでほしいわね」

ケ「警備隊から、この街からいなくなった理由なんて

  私が知りたいくらいなんだから」

イ「どんな人だったんですか?」

ケ「斜に構えてるくせに皮肉屋で寂しがりで

  そのくせ仕事だけは超一流って感じだったわ」

ケ「私より9個も年上だったけど、尊敬しようと思えるような

  人間じゃなかったのは確かね」

イ「すごい言いようですね」

ケ「事実だもの

  というか、拷問官に素敵な性格の奴なんているわけないでしょ」

イ「そうかもしれませんね

  ってことは、その方も尋問官だったってことですか」

ケ「そういうことよ、本当にやかましい男だったけど

  その技術だけは飛び抜けて優秀だった」

ケ「まるで幼少期からその訓練を受けていたように、ね」

イ「……警備隊に入る前にも、同じような仕事をしていた、と?」

ケ「さあね、それは誰にもわからないわ

  無駄にうるさいくせに、自分の過去だけは話そうとしない男だったから」

ケ「もともと素性のしれない奴だったし

  ふっといなくなったのも不思議じゃないのかもしれないわ」

ケ「とにかく、あいつは私に知識や技能を残して

  ある日突然この街から消えた」

ケ「私が知っているのはそれだけよ」

イ「何か不満や不安があったんでしょうか……」


ケ「尋問官ってのは、隠しておくべき事実や情報を

  否が応でも知らなくちゃならないもんじゃない?」

ケ「当然、それだけ命の危険も一緒に抱えることにもなる

  そして警戒すべきは犯罪組織だけじゃない」

ケ「警備隊がもう一人尋問官を揃えようとしているなら

  自分は用済みなんじゃないかと勘繰るのは当然のことよ」

イ「もし用済みだったとしたら、」

ケ「さあね、あいつが今生きてるのか、それとも誰かが殺したのか

  私にはわからないまま」

ケ「ま、今のところ隊長に拷問官を増やす予定はなさそうだし

  どうやら私はしばらく安泰みたいね」

イ「……」

ケ「こんなもんでいいかしら?

  思い出したくもないくらいには嫌いなんだけど、あいつ」

イ「そういえば、名前はなんていうんですか?」

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