礼拝堂・1
イ「この辺は道が入り組んでるなあ
裏通りはどこに行っても、おんなじに見えるや」
(音・鐘)
イ「何、この音? 楽器の音みたいだけど
音楽にしては単調すぎるし」
イ「街の外で聞いたどんな楽器よりも澄んだ音
だけど体の底を揺らすような」
(音・鐘)
イ「……止んだ なんだったんだろう、今の
あっちの方からだったような」
イ「よし、見に行ってみよう!」
イ「この辺りだと思うんだけど……
なんだ、あの建物!」
イ「壁は彫刻でいっぱいだし、一番上に塔みたいなのあるし
何かヤバそうな匂いがプンプンするんだけど」
イ「でも、好奇心からは逃げられないなあ
ちょうどそこに扉があるし、入っちゃえ」
イ「太陽の下に人がいる絵が、廊下にいっぱい並べてある
なんかみんな笑顔で、なんか怖い」
レ「ちょっとちょっとおねーさん!」
イ「ん?」
レ「何やってんのさ ここは教団の関係者しか入れないんだよ!
ほら、早く出てった出てった!」
イ「教団? ここはなに?
さっきの不思議な音は、ここで鳴らしてる?」
レ「いーからいーから、それは出て行った後!
ここの奴ら、ゆーずー効かないから!」
イ「えええ」
レ「ったく、宗教家のアジトに忍び込むなんて
蜂の巣をつつくようなもんだよ!」
イ「宗教家?」
レ「そ、しゅーきょーしゅーきょー
太陽信仰の延長線上だから咎められちゃいないけどさ」
イ「太陽信仰って、何?」
レ「お天道様が私たちを照らしてくれるから
私たちは健康に暮らせるんだーってやつ」
レ「んで、実は太陽こそが私たちの主君であり
私たちは光の子だあー、って夢物語を広めてんのが、ウチさ」
イ「……よくわからない」
レ「だろうね、私だってチンプンカンプンさー」
イ「ならなんで、さっきの部屋には関係者しか入れないって……」
レ「教祖様の娘なのさ、私ってやつはー
おかげで毎日つっまんなくてしょーがねーよ」
イ「……大変なんだ」
レ「そ、大変大変 だから、この辺をうろつくのはやめといた方がいいよ
奴ら、自分の言い分を聞かない人間を悪魔だって言いふらす」
イ「ん……えーと、名前は?」
レ「私? レグだよ、レグ
レグ マーティ」
イ「私、イーリ あのさ、今度また暇になったらここにくるから
話聞かせてよ、その大変な毎日ってやつの」
レ「えぇ……もしかして宗教に目覚めたの?」
イ「宗教家ってやつの生き方に興味が湧いただけ」
レ「それはそれでおかしい人だなあ」
イ「ん、よく言われる」
レ「あは じゃあ私はそろそろ呼び出される頃だから行くね
おたっしゃでー!」
イ「じゃあね」
イ「あ、結局あの音の正体聞けなかったなあ
まあいいか、また会えるし」
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