礼拝堂・2

イ「おーい、レグやい」

レ「おうおう、イーリじゃないかー」

イ「何やってんの? そんな大荷物抱えて」

レ「真面目に祈りを捧げないのなら、せめて雑用くらいしろって

  晩飯の買い出しに連れ出されたのさ」

イ「そりゃあなんというか、ドンマイだね」

レ「ったく、最近ちょっと信仰者が増えたからって

  調子乗ってんじゃねえよー、まったく」

レ「昨日だって光都警備隊の人たちと遅くまで話し込んでたし」

イ「え? 警備隊員が?」

レ「ん、そだよ 黒髪のおっかない女の人」

イ「隊長!? それ、ほんと?」

レ「え、あの人そんな偉い人なの?

  てかなんでイーリが知ってんのさ」

イ「いや、だって、わたし隊員だし」

レ「」

イ「……そんな驚かなくても」

レ「い、いやあ そういや今はまだ学校ある時間じゃーとか

  そんな疑問を抱いてはいたんだけどさ」

イ「ま、実は今年待ちの外から編入してきたばかりで

  実は隊長のことはよく知らないんだけどね」

レ「」

イ「そんなに驚かなくてもさあ」

レ「自分より珍しい境遇の人に、初めて出会ったよ」

レ「ま、イーリは変なやつだし、納得だけど」

イ「なにおう」

(音・鐘)

イ「そだ、これって何の音なの?」

レ「え? 鐘だけど……知らないの?」

イ「?」

レ「そーだなー、よし、ついてきて!」


レ「ほら、この梯子登ったらもうすぐだよ」

イ「えほっけほっ、ここ埃っぽい……」

レ「しょうがねーよ、屋根裏なんて滅多に掃除しないしー

  それより大声出さないこと、私が罰を受けるんだからね?」

イ「わかったわかった、さて、最後の一踏ん張りだ

  よい……しょっと って、うわあっ!」

レ「驚いたかー? これが大鐘だぜ

  朝から夕方まで、二時間おきに鳴らすんだ」

イ「ほえー、こんな薄錆だらけの鉄の塊が

  あんな澄んだ音を鳴らすなんて……」

レ「それ、うちの信者に聞かれたら袋叩きだぜ」

レ「まーあれだよ、太陽の使者である私たちが

  皆様に現在時刻を知らせますよーって」

イ「この街にとって、太陽はそれほど大事なものなんだねぇ」


レ「ま、気に入らないとはいえ

  あれがなくちゃ生きていけないのは確かだからね」

レ「ただ、太陽なんてのは光を発してる星にすぎない

  それ以上の幻影を見ちゃいけない、そう思うんだ」

イ「……」

レ「こんなこと言う私を、大人は指差して言うんだ

  闇に飲まれた悪魔の子だ、もしくは未熟なクソガキだって」

レ「私にはおかしいのは奴らだとしか思えないんだけど」

イ「……」

レ「あ、ごめーん なんかウザかったよね、今の私

  ごめんちごめんち」

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