天文台2

コ「ふむ前回渡した本、ちゃんと理解してるようですね

  けっこう難しい内容だったのに、凄いです」

イ「面白かったからね 何度も読み返してた

  それより、あれはなに?」

コ「あれ? ああ、天体観望室のことですか

  大きな望遠鏡を使う部屋、といったところですね」

イ「なんで屋根が丸いの?」

コ「空も丸いからですよ、どこにも継ぎ目がない以上

  360度を見渡せる構造じゃないと」

コ「残念ながらあの部屋を使うには準備が必要でね

  今から使うっていうのは少し厳しいです」

イ「わかった、できそうな日があるか探してみる」

コ「こちらとしては、2日前くらいに教えていただければ

  幸い、ほぼ毎日予定はすっからかんなので……」

コ「おかげで、肩身は狭いんですけどねえ……」

イ「そうなの? こんなに凄いことやってるのに」

コ「この国において光の裏側について探るのは異端

  狂気の中に身も心も染める天文学は半ば禁忌と見なされてますから」

コ「私の師匠であった人も私の独立と同時に休業

  共に学んだ光学系の技術者も暗闇で気が狂い自宅で焼死」

コ「適度にサボり続けていた私だけが

  この中途半端な城で夜空を見上げてるわけです」

イ「……いいよ、私も似たようなもんだし」

コ「え?」

イ「隠れてるものは見たくなる そういう生き物、だから」

コ「なるほど、ねえ 確かにそうかもしれません」

コ「死んでいった彼らとは十数年を共にしましたが

  弱音を吐くことはあれど、後悔していると聞いたことはないですから」

コ「無論、私もです」

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