天文台1

イ「ええと、この辺だったかな?」

イ「あ、あった あそこだ、辺な建物

  なんか屋上が丸くて可愛いけど」

イ「なんて名前だっけ……テンモンダイ?

  任務中に見つけて、いつか中に入ってみたいなって」

イ「でも、北部にあるってことは研究施設だし……

  勝手に入ったら怒られそうだなあ」

?「どうしたんですか? そんなところに立ち尽くして」

イ「うわっ」

?「ルクヴィルド国立天文台に何か用ですか?

  開館まであと一時間ありますが、急用なら伺いますよ?」

イ「あ、あの……ここは何をする場所なんですか?」

?「ん? 夜空を眺め続けるだけですよ

  年頃の娘が興味をそそられるようなもんじゃないですね」

イ「……」

?「どうしました?」

イ「すっごい興味そそられます!」


イ「うっわぁ……!」

?「ここまで感心してくれるとなんか恥ずかしいですね

  館長冥利に尽きます」

イ「え」

コ「申し遅れました、私ここの館長兼研究室長を勤めてます

  コメット デューゼと申します」

コ「ま、館長といってもエンジニアと助手が二人

  事務員と清掃員が一人のちっぽけな施設ですが」

イ「あの、準備時間なのに特別に入れてもらって

  ありがとうございます、コメットさん!」

コ「いいんですよ、待てど待てど人の立ち寄らない場所です

  せっかく来た人を追い返せるほど忙しくもないんでね」

イ「それにしても、本や数式がいっぱい……

  これ全部夜空についてのものなんですか?」

コ「そうですね、星や月などを観察し私たちがいるこの世界を知る

  そのための研究施設ですから」

コ「ただ一つ言えるのは、夜空に限った話ではない

  というところでしょうか」

イ「?」

コ「昼と夜の違いは、なんだと思いますか?」

イ「それは……太陽があること?」

コ「そうですね 太陽の光が降り注いでいることです

  では、月や星はどうでしょう」

イ「消える……いや、時々見える?」

コ「そう、月や星は消えるわけではなく、太陽光に飲み込まれる」

コ「それは星たちの光が儚いからかもしれないし

  遠くにあるからかもしれない」

イ「……もしかしたら私たちは今日この瞬間も

  太陽によって何かを見失っている、かもしれない?」

コ「ま、そういうことです」

コ「もっともこんなことばっかり考えてるから

  世間からは疎まれ続けるんですけどね」

イ「……」

コ「興味が湧きました? この広い空の、さらに向こうに

  なら、この本を貸してあげましょう」

イ「いいんですか?」

コ「はい、その世界を伝えるために天文台はあるんですから」

イ「……また来ます!」

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