第12話 引き寄せる
すり寄っていったその人を、
見誤ったと知ったのはすぐのこと。
後味悪く逃げ出したのは、
散々傷ついた後だった。
出会った人たちの名前も思い出せないのは、
あの頃のわたしが招いた諸々だからだ。
離れれば、
遠くに逃げれば、
安全だと思っていた。
安心だと、信じたかった。
終わりを記さず、
伝えることをせず、
ただ忘れられることを祈っていた、
その卑怯な弱さを思い知らせるように、
圧倒的な存在感をもって現れて、
あラわれて、
あらわレて、
こうして視界を鬱ぎながら、
すべての心を塗り潰していく。
そしてわたしは、
必死に目を背けて、
背を縮めて、
また、
逃げ出すんだ。
奪われたものに、
手を伸ばしもせず。
敏く鈍く(仮) よこもりこもり @hagumu-i
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。敏く鈍く(仮)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
猫のチョビさん、ニート観察日記/桜雪
★65 エッセイ・ノンフィクション 完結済 320話
創作活動日記最新/囀
★15 エッセイ・ノンフィクション 連載中 23話
過去と現在の狭間に最新/藍色の星 みり
★5 エッセイ・ノンフィクション 連載中 59話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます