第8話

桜は散り舞うのではなく、こぼれるのだと思う。

今年の桜を見ると、そう思う。


菜の花が好きなの。

かわいいよね。

うん、そして美味しいの。

あぁ、美味しいよね。

それでね、ちょっと花が咲くくらいが好き。

そうなんだ。

うん、春を食べてる感じがする。

へぇ、花の香りがするの?

そうそう、懐かしくてね、なんか嬉しい感じなの。


そんな風に交わす会話を、想像できる人だった。

どこかのどかな人だった。

きっと、そうあってほしかった。

交わされない会話は、失う資格すらない。


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