第35話 マッチ&ポンプ
今まで滅多にない健全な朝の運動をした後は。
朝から例の露天風呂だ。
早くも混浴になってしまっているが何故かもう気にならない。
というか気にしているのはきっと男性の方。
皆さんたる湯とか浴槽の端っこの方にいらっしゃるし。
ロビー先輩だけは何も気にしないようでジェットバスで伸びているけれど。
私の場合は前回の経験から、あつい湯船→シャワー→ぬるい湯船にしてみた。
樽湯は温度調整できるけれど足が伸ばせない。
そしてお風呂は全身伸ばしてお湯に浸かってこそだと思うのだ。
今のところは。
ちなみに朝の一番人気はミストサウナでストレッチ。
あれも悪くないのだろうなとは思う。
咲良さんは歩行湯がお気に入りのようだし、愛希先輩はやっぱり寝湯。
沙知先輩はミストサウナからぬる湯というコースのようだ。
そんな感じでまったりしていると。
「朝御飯なのですよ」
と詩織先輩が窓から声をかけてくる。
ゾロゾロと上がって服を着替えて朝食準備。
ただ夕食の時とはちょっと趣が違う。
カウンター部分に色々と料理入りのお皿が並んでいる。
カット済みのパンとかスパゲティとかスクランブルエッグ等々。
「今朝は簡易朝食バイキングです。適当にとって下さい。スープはキッチンに3種類用意しています」
なお全然簡易ではない。
主食がカット済みの大きい丸いパン、クリームスパゲティ、五穀米の御飯。
おかずがハム、生ハム、チーズ、レタス、カットトマト、オクラ、キュウリ、スクランブルエッグ、ほうれん草のたまご炒め、焼き魚、焼鳥、刺身サラダ、おぼろ豆腐、納豆パック……
何かわからない、灰色に近い白いなめらかな弾力性のある物体もある。
中で朗人先輩が作業しながら監視。
足りなくなりそうなものはすぐ補充が入る。
どうも遠慮はいらない模様だ。
ならば。
大皿2枚に小皿1枚、深いスープ小皿2に取れるだけ種類を取ってしまう。
我ながら少々はしたない気もする。
でも先輩達もそんな感じだ。
一通り取り終わった後、朗人先輩が座卓の方へと来て。
「いただきます」
と皆で食べ始める。
まずは伸びると悲しいスパゲティから。
うん、間違いなく美味しい。
生ハムが火を通してちょっと透明になっている。
そしてその塩味がパスタに絡みついていて……
思わず夢中で食べてしまった。
というかこの1品だけで満足レベルだ。
少なくとも私には。
そして次は謎の灰色に近い白色の物体に挑戦。
食べてすぐその正体が判明。
かまぼこだ、これ。
それも相当に美味しい部類の。
スープすら3種類とも凄く美味しい。
多分生ハム出汁だと思う野菜いっぱい入りコンソメ風スープとか。
夕食と同じ系統のココナツミルク入りちょい酸味あるスープとか。
超伝統的なコテコテの豆腐とわかめ入りのみそ汁さえも。
何人も追加おかわりでカウンターの方へと往復しているのが見える。
でも私はこの量でも食べすぎ状態。
咲良さんは果敢におかわりしているけれど。
夕食も凄かったが朝食も凄い。
食べ過ぎでトド防止の運動が必要な訳だ。
でも……
「いつも思うんだけどさ。朝運動してお腹空かせてこれ食べるのって逆効果じゃないか。食べ過ぎろと言わんばかりでさ」
「お望みならメニューを貧弱にして味を3割減にしてもいいですけれど。調理担当としては悲しいですけれどね」
「それは勘弁して。週末の楽しみのひとつなんだから」
「大げさなと言えないところが問題ですわ。特に朝食は最近凶悪化していますし」
先輩方も問題は認識しているらしい。
でも是正の見込みは無さそうだ。
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