第34話 健全な朝
まあそんな下らない話を延々としていたので、当然朝は眠い訳で……
私もうとうとぐだぐだしていたら。
何か胃袋から手が出そうないい香りがした。
起きてみて。
いつもと違う天井と布団に気づく。
そうだ、保養所で寝ていたんだ。
改めてそれに気づいて。
香りは3種類。
紅茶の香り、コーヒーの香り。
そして肉系の、多分ベーコンとかハムとかの香り。
キッチン方向に明かりがついていて、朗人先輩が何やら作業中。
と、カーテンが開けられ突如明るくなった。
窓の外は南国のギラギラした朝だ。
「朝ですよ。朝のトド対策ランニングの時間なのです」
詩織先輩の声。
何だろう。
トド対策ランニングって。
取り敢えず半身起こして、そして慌てて浴衣をちょっと調えて起きる。
先輩の皆さん私と同じような感じで起きだしている。
わからない時は先輩方の動きを見習おう。
シーツ剥がして布団を畳み、皆で仕舞って、シーツは巨大なカゴに入れて。
というところで香緒里先輩に捕まった。
「よければこの着替え使って。多分サイズあうと思うから」
とまだこっちが正常な判断力と反応できないうちに服を渡され。
見るとイージーパンツとTシャツとパーカーだ。
運動用という事らしい。
お金持ちなのに某安価ブランドのところが好ましい。
有り難く着替えさせて貰う。
来客用らしい歯磨き付歯ブラシで洗面等して。
「ところでトド対策ランニングって何ですか」
と沙知先輩に聞いてみる。
「早い話が、体型維持のための運動奨励ですわ」
うん、何となくわかった。
更に愛希先輩が追加説明してくれる。
「昨日はそうでもなかったけれどさ、朗人の作った食事って時々美味しすぎて食べ過ぎたりするんだ。それで食べ過ぎて動けなくなって横になる事を通称『トド』って呼んでいるんだけどさ。
今年の正月はちょっと色々美味しいものを食べすぎたせいで体重維持が問題になってさ。それでこの運動習慣を始めたんだ」
詳細とっても納得の上了解。
昨日の料理だって私としては少々食べ過ぎた。
「行く前に何か飲んでいって下さいね。あと薄いスポーツドリンク入りペットボトルも冷蔵庫に入っていますから」
朗人先輩の声。
カウンターに冷たい紅茶とコーヒー入りのガラスポットが用意してある。
至れり尽くせりだ。
そんな訳で紅茶を1杯いただき、そしてペットボトルを持って外へ。
車が2台しか泊まっていない駐車場で皆で柔軟運動をしてから歩き出す。
ランニングのコースは3コースあるそうだ。
取り敢えず私は様子見で一番楽なコースへ。
咲良さんはハードなコースへ一気に行ってしまった。
そして私が同行するのは5人。
朱里先輩、修先輩、ジェニー先輩、美雨先輩、典明先輩。
朱里先輩は小さめでいかにも華奢な感じ。
そして美雨先輩はきっと典明先輩に付き合いだ。
その辺の愚痴と惚気は昨晩色々聞いている。
残りの3人は慢性運動不足という感じだ。
なので速度はほぼ早足程度。
それでも朝の空気が心地いい。
離島だから空気が綺麗だし、景色もいいし。
大学の門から中に入り、グラウンドを大きく一周する。
グラウンドの先に見える海がとても綺麗だ。
朝の太陽を受けて輝いている。
そんな訳でのんびりまったり走って、魔技高専の校門から出てマンションへ戻る。
ただちょっとこのコースは私でも余裕過ぎるかな。
明日は普通コースで行こうかなと思う。
典明先輩は大汗かいてかなりしんどそうだけれども。
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