第36話 学生会役員の休日

 朝食の後は三々五々、という感じ。

 勉強をしている組もいればパソコンに向かっている人もいる。

 私と咲良さんは取り敢えず沙知先輩の解説入りで色々見させてもらう。

 題して『学生会役員の休日の実際』見物ツアー。


 まずは大広間座卓その1。

 料理長と青葉先輩がそれぞれ自分のパソコンに向かっている。

 何やらメモを書いたり見たりしながらパソコン操作中。

「魔法工学科は課題がよく出ますからね。温かい目で見守ってあげてください」

 とは沙知先輩の解説だ。


「円周率を求めるパソコンのプログラムを作れという課題でごわす。相談不可だからそこんとこヨロシク。

 ただ今年から参考書やネットを見て調べるのは許可された。でも精度の高い計算ルーチンを自作という難問も付加された。まあ慣れないと結構大変な課題だから、生暖かく程度でいいから見守ってやってありんす」

 と、同じ科同じ学年の典明先輩が追加説明。

 語調が時々怪しいのは癖らしい。


「典明先輩自身はどうなんですか」

「取り敢えず3パターンの方法論で作成済みでござる。今回の肝はアルゴリズムより精度の高い計算ルーチン。それさえ仕上がれば他パターンなんて幾らでも」

「そんな事言えるのは典明だけだけどな」

「同感!」

 向こうから2人の先輩の感想が帰ってくる。

 きっとあちらが普通の学生で、典明先輩が特別なのだろう。


 そして露天風呂の先にある、空飛ぶ漁船等を駐機するための場所では。

 ロビー先輩は鼻歌を歌いながらシーツやタオル、浴衣等を洗濯作業中だった。

 洗濯と言っても普通の洗濯機とかを考えてはいけない。

 もっと豪快かつ強烈だ。


  ① 魔法でスペースの半分に洗濯物を散らす。

  ② ホースで充分に水をかけまくる。

  ③ 魔法を起動

  ④ 何故かきれいになったシーツや浴衣やタオルが、乾燥して折りたたまれた状態で手元のカゴに収納される。

という手順。


 魔法そのものに色々な魔法や手順を織り込んだ工作魔法。

 最近の言い方だとシステム魔法の類なのだろう。

 何か騙されたような気になるが便利な魔法ではある。


「この魔法は他には典明君が使えますわ。やはり組み合わせ系、システム魔法になると魔法工学科が得意ですね。朗人君の料理魔法もシステム魔法の一種ですわ」

と沙知先輩。

 

「次は校庭に移動します。まずは玄関で靴を履きましょう」

 との事で玄関へ。

 そして移動魔法で向かった先では。


 激しい魔法戦闘が展開されていた。

 どちらも空中地上関係なしに自在に動き回っている。

 交錯しているのは強力な攻撃魔法。


「ルイス先輩と愛希先輩の模擬戦闘ですわ。戦闘スタイルが似ているので見た目にも楽しい模擬試合になります」

 私の視力では移動を追うのがやっと、という感じだ。

 そして避けられた魔法がグラウンドを穿ち、爆発だの凍結だのしている。


「すげえ……」

 咲良さんには私以上に2人の動きが見えているのだろう。


「どう見えるの」

「新入生相手とか私相手の模擬戦が全然本気じゃなかった事が良くわかる。パワーにしてあの時の優に8倍以上だ。しかも本気じゃない。お互い余裕レベルの練習だ」

「あれで……」

 冗談ではなくちょっと目を離すと見失いそうな動きだ。


「しかも杖とか制御増幅系の魔道具を一切使っていない。それであれだけ動けて魔法を出せて……。

 これでも私、自分の魔法使いとしての実力には自信があったんだ。でもこうして見るとまだまだ遠いな、あのレベルには」


「まああの2人は学内の頂点のひとつですから。

 あとはエイダが大山の崖のところで訓練中というところでしょうか。あの人の訓練は崖にしか見えない岩山を走って上り下りするというものなので、ちょっと観察する適当な場所が取れないのですわ。

 そういう事で、保養所に戻りますね」


 また魔法移動。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る