第8話 勧誘?
そんな感じで今日の日課時限が終わり、下校時刻に。
相変わらずの校門前渋滞を避けて昨日の岩場へ。
ちょっとまわりを見て何となくがっかり。
目が無意識にあの綱島先輩を探していた。
その事にちょっとばかり驚く。
私は1人でやっていこうと思っていたのに。
独りでやっていけると思っていたのに。
何故だろう。
確かに素敵な人だったけれど。
とその時。
「どうしました?」
とっさに振り向く。
左後ろにさっき目が探していた当人がいた。
誰もいなかった筈なのに。
とっさの動揺を何とか押し隠す。
「今日も勧誘合戦を迂回ですか」
「ええ、あまり得意ではなくて」
今の返事は普通の口調で話せただろうか。
彼女は微笑む。
「まあ、ちょっと強引な研究会もありますしね。ただ
彼女はそう言って崖の方へ歩き出す。
私もその後についていく。
昨日と同様、あっさりと寮に到着。
「ところで今日、この後の予定ありますか」
さらっと彼女はそんな事を聞いてくる。
いきなりだ。
とっさの事に返事がすぐに出ない。
警戒心という以前にそういう質問に慣れていないせいだ。
「ごめんなさいね。何か勧誘みたいで。ただ単に私1人で夕食食べるのもどうかな、と思っただけで。
でも私、料理が得意ではありませんし、カフェに行くにも校門のあの人だかりはちょっと。ですからお店で軽くパンでも、という感じになりますけれど」
私の財布でもそれくらいなら大丈夫だろう。
正直、宗教などの勧誘っぽい感じのシチュエーションだとは思う。
ただ本心では一緒に行きたい気もする。
こういう場合の適切な方法論は残念だけれど私の頭の中に無い。
「そうですね。じゃあ条件ひとつ。今日の夕食くらいは私の財布からおごりますよ。あと学生会の勧誘はしません、取り敢えず今回は。学生会に限らず勧誘はしません、と言った方がいいでしょうか。
口約束ですけれど、この特区ではそれなりに効力はあるのですわ。お互い持ち魔法を知りませんし、魔法でいざこざ起こしたら怖い人がすっ飛んできますしね」
なるほど。
魔法特区ならではの事情というものがあるのか。
「でも私の分のお代は払います。あまりに悪いですから」
「大丈夫ですよ。それに1年だと色々大変でしょう。パソコンとか教科書代とか」
痛いところを突かれた。
レポートを書くのにパソコンは必須だし、教科書や辞書類はかなり高い。
だからパン冷凍してなんて節約を考えたのだ。
昼はさすがに人目もあるのでカフェテリアで一番安い定食を食べたけれど。
歩いていると既に女子寮の入口だ。
「では、
という綱島先輩と別れ、階段を駆け上り自分の部屋へ。
カバンから財布を出して小さいバックに入れ、引き返す。
急いだはずなのに先輩は既に着いていた。
バックが変わっているからそのまま待っていたという事では無いだろう。
部屋がよっぽど近いのだろうか。
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