第6話 再会
次の日は午前中は授業の履修説明。
午後は学生会主催のオリエンテーションだった。
要は研究会やサークル等の紹介だ。
そこで私は昨日の彼女を発見した。
しれっとした顔でオリエンテーションの司会をしている。
彼女は学生会の役員なのだろうか。
学生会の会長は小柄で活発そうな女の子だった。
でも他の役員は紹介されていないからわからない。
それらしい学生は何人か控えているけれど。
一通り講堂での紹介が終わる。
今度は歩いて色々説明という事になった。
日本語が不得意で英語の方がいいという学生は別れて別の班へ。
そういう対応が学生会レベルであるというのが何か凄い。
さすが特区。
そして補助魔法科A組の案内に着いたのがあの彼女だった。
「学生会で広報担当をやっています綱島沙知です。皆さんと同じ補助魔法科の3年ですわ。宜しくお願いしますね」
彼女はそう言って一礼。
綱島先輩か。
やっぱり学生会の人だった訳だ。
でも学生会の人があんな崖経由の塀越えなんてやっていいのだろうか。
まあ寮監の教官が注意しないのだからいいのだろう。
きっと。
「それでは案内しますわ。あと日本語の説明がわからない方は言って下さいね。英語とフランス語とドイツ語くらいなら何とかしますから」
この人はそれだけマスターしているのか。
うーん、何か住んでいる世界が違うかな。
私があと2年でそうなれるかちょっと考える。
ちょっと無理。
そんな感じでオリエンテーションが始まる。
◇◇◇
いくつかある工作室に陣取っている制作系の研究会とか。
医学系の研究室にたむろっている研究会とか。
攻撃魔法を日々練習しているところとか。
歩いて行くうちに疑問が浮かぶ。
何故か普通の高校にありそうなバスケとかバレー、テニス等。
そんな一般的な運動関係がまるで無い。
文芸部とか演劇部とか文化系はそこそこあるけれど。
何故だろう。
ちょっと疑問に思う。
あっても入る気は無いけれど。
なので。
「これで公認している部活や研究会等はひととおりです。何か質問はございますか」
と言われた時に手を上げてみる。
本来の私はそんな質問とかをするようなタイプじゃない。
何かあっても黙っている方だ。
でも相手が彼女だから、そういう甘えがあったのかもしれない。
「はいどうぞ」
と当てられた。
「この学校には一般的な球技等の運動部は無いようですけれど、どうしてですか」
彼女は頷いた。
「理由は簡単です。色々な意味で試合が成り立たないからですわ」
そう言って彼女はポケットからゴルフボールを取り出す。
「この質問はきっと出る。そう思ってあらかじめ準備しましたの」
彼女は3歩ほど歩いて集団の端に行く。
「このゴルフボールそのものは何の仕掛けもありません。単に良く弾むブランドだという程度です。これをこうやって投げてみて、と」
無造作に奥の壁目がけて投げる。
ボールは奥の壁、床、左の壁と跳ね返り、正確に彼女の右手に戻った。
思わずおーっという歓声が起こる。
「別の角度でも出来ますわ。こんな感じに」
今度は天井、左の壁、床、奥の壁、右の壁と跳ね返る。
やっぱり正確に彼女の手元へとボールは戻る。
「私は身体操作魔法と空間把握魔法をちょっとだけ使えます。これを応用したらこれくらい簡単ですわ。身体強化できる魔法を使う魔法使いも多いですし、先輩には未来予知とか移動魔法を使う魔法使いもいますしね。
つまり、一般人用のルールに基づいた球技だと試合にならないのです。皆さんチートですから」
良くわかった。
確かにこんな魔法使いが何人もいたら試合にならない。
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