第1章 綱島先輩

第4話 魔技高専1日目

 今日は入学式。

 そんな訳でカバン代わりのデイパックを持って寮から出かける。


 格好は自由。

 一応『襟のある服装で、派手な色は避けて下さい』。

 学校側の資料にはそう記載されている。

 そんな訳で白のポロシャツで。


 見てみると同じような服装の子が多い。

 小冊子にこの格好が無難ですと載っていたせいもあるだろう。

 『魔技高専はんどぶっく』という題名で合格書類と同梱されていた。

 ここの学生会が発行した物のようだ。


 あの小冊子はなかなかわかりやすくて良かった。

 買い出しの時に参考にしたのもこれだ。

 本音部分を容赦無く攻めていて、それでいてなかなかセンスもいい。

 強いて言えば所々に出てくる説明キャラクター。

 ちょっと若干趣味的な感じでマイナスかな。

 うるさいフェミニストなら叩くかも。


 教室について、指定された席に座る。

 出席番号は補助魔法科1年A組の28番。

 男女和洋折衷な名簿順だ。

 ちなみに男子はA組36人中7人。

 名前が日本人っぽくないのは男2人女6人。

 田舎の中学からいきなりこれだとカルチャーショックを受けそうだ。

 あんな場所に帰る気、私には全く無いけれど。


 まだ行事まで時間はあるので提出書類を再度出して確認。

 もっとも書き漏れとか書き間違え等は無い筈だ。

 これは単なる暇つぶし。

 例のはんどぶっくを読んでいる人もいる。

 そっちの方が楽しいかな。


 あとは早くも仲間をつくって話をしている人も、

 そういう順応性は私には無い。

 羨ましいと思うより面倒くさいという思いの方が先に来てしまう。

 それでも全体としては静かな方が多いかな、ここは。

 何かと群れたがる女子ばかりを見てきた私には割と新鮮。

 そして心地いい。


 さて。

 教官が入ってきた。

 中年のおばさんというかお姉さんというか。


 名前は紹介されるまでも無く書類で知っている。

 筑紫野遙香、魔技高専補助魔法科教授。

 専攻は魔法医学だが攻撃魔法の博士号も持っている。

 万能型な魔法使いだ。

 その肩書きからするとかなり若く見える。

 外見年齢なら30そこそこというところだろう。

 その外見年齢は魔法のおかげか日々の努力のたまものかは不明。


「さあ、ちょっと早いけれど始めましょうか」

 という感じでまずは提出書類の説明と確認から始まる。


 ◇◇◇


 入学式をやって手続きとか説明とか受けて。

 帰ろうとすると昇降口から校門まで人だかりが出来ている。

 サークルとか研究会の勧誘合戦らしい。


 人混みは嫌いだ。

 校舎内を迂回しようか少し考える。

 でも外へ出る門は確か2箇所。

 魔技高専と魔技大の門しかない。

 魔技大の方も確か今日が入学式。

 あっちはもっと混んでいるだろう。


 どうしようか。

 勧誘をいちいち断るのも面倒というか嫌だな。

 そう思っていた時だ。


「回り道で良ければこっちにありますよ」

 不意に私の思いを見透かしたような声がした。

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