第2話 20平方メートル弱の私の城
寮の自室に入って、荷物を下ろして。
最初から用意されているベッドに腰掛けて一息つく。
ここが私の当面の生活の場所だ。
作りとしては悪くない。
共同部分は廊下だけ。
部屋に風呂もシャワーもキッチンも揃っている。
生活慣習が違う学生が多いからという理由らしい。
でも私にもあっている。
面倒な人付き合いとかしなくていいから。
部屋自体の広さは必要最小限。
ベッドと机の他、その気になればこたつが1つ置けるかなという程度。
作り付けの衣装ダンスもあるし私にはこれで十分。
どうせ誰も呼ばないだろうし。
何せ前は酷かった。
魔法を使えるものでいじめられかけ、反撃したら孤立した。
面倒だから孤立したままでいたけれど。
おかげでこんな性格になってしまった訳だ。
我ながら可愛気が無いと思うけれど大きなお世話。
私は私で生きていく。
放っておいてくれという奴だ。
まあどうせ実家には帰る気は無いけれど。
ちょっとばかり過去に向けて呪いの言葉を吐いて。
それから私は色々準備に取りかかる。
服は作り付けの衣装だんすに持ってきた最低限をかけておいた。
気候は温暖らしいし魔技高専には制服が無い。
だから当分これで足りるだろう。
奨学金が貯まったら少し買い足せばいい。
あとは入学式の日までに書いておけと言われた書類を取り出す。
入学関係と奨学金関係。
そこそこに書類は多い。
でもまとめて複写である程度書けるのは評価していいだろう。
同じ事を何回も繰り返さないで済む。
その書類で見るあたり、なかなかここは良く出来た処らしい。
手続きも書いて学校へ持っていくだけと合理的。
御馬鹿な処だとあちこちで書類を書いたりして回る必要があるから。
この寮へ入る手続きも書類確認と入寮手続きの書類1枚のみ。
その書類はほぼ必要事項記載済みで、私はサインするだけだったし。
手続き書類の中には住民票の転入届まである。
大部分の必要事項は既に記入済みだ。
これにわざわざ市役所で作ってきた転出証明書を足せば、面倒な手続き無しで転入完了という訳だ。
うん、なかなか賢いぞ、魔法特区。
ちょっとだけ機嫌良くなった私はお出かけの準備をする。
食事の買い出しだ。
一応大学のカフェテリアが平日休日関係なく夜までやっているらしい。
でも私は貧乏学生なのだ。
あんな家にはあまり頼りたくないし。
だから生活費も奨学金枠内でおさめる必要がある。
3食外食で1,000円を超えるなんて勿体ない。
そんな訳で当座の買い物をするため、街へと出かけることにした。
ただ買い出しできそうな場所は1箇所しか無いらしい。
入学手続き書類とともに送られてきたガイドブックによれば。
『田舎なので本当にこの1軒しかありません。あとは横のパンと和洋菓子を売っている店だけです』という注意書きまであった。
いいだろう。
下手に迷わないで済む。
そんな訳で私は寮から出て坂道上ってこの島唯一のスーパーとやらへ。
そしてスーパーで私はここが離島で有る事を改めて知るのだった。
生ものがほとんど無い。
ほとんどが冷凍かレトルト。
パンも天然酵母使用とか言ういまいちな感じのだけ。
これは手強い。
申し訳ないが私は料理が苦手だ。
だから食パンでも買ってちまちま焼いて食べようと思ったのに。
そう言えば菓子屋兼パン屋が近くにあると書いてあったな。
私はそっちをのぞきに行くことにする。
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