魔法少女のりっかちゃん ~Machine Nerd ++~

於田縫紀

プロローグ

第1話 逃れの街

 羽田空港。

 人生始めての飛行機はまわりと比べて貧弱な感じだった。

 長さも幅も他と比べて2まわりくらい小さい。

 一応ジェット機だけれども。


 中に入ってみても印象は変わらない。

 新幹線より狭い感じ。

 でも昨年まではプロペラ機だったらしい。

 だから今はまだましなのだろう。


 これから私が行く場所は僻地。

 小笠原諸島の聟島という離島だ。

 人口5千人に満たない田舎。

 魔法特区と言えば聞こえはいいけれど。


 まあ、今まで私がいたのも田舎だけれども。

 私、橘律花たちばなりっかはこの春から魔法技術高等専門学校補助魔法科へ進学する。

 そんな訳でこの飛行機の客になった訳だ。


 進学には大いに揉めた。

 うちの両親は公立派。

 しかも父親側の祖父と祖母は女子に学問は必要無いという持論を持っている。

 何時代の生き物なんだろう。

 祖父母も両親も日本語での説得は無理だった。

 言語で話し合えるのは相手に同程度の知性が必要だ。


 最終的に魔技高専に進学できたのはお金のおかげ。

 魔技高専は合格して希望すると国から奨学金が出る。

 学費プラスぎりぎりの生活費というところだけれど。


 これが親説得の材料になった。

 卒業まで生活費含めて一切お金がかかりませんよと。

 更にある程度の成績を維持していれば国立の魔技大へ進学可能。

 そして補助魔法科から魔法医学に進めば引く手あまたで給料も高い。

 しかも大学卒業まで奨学金は全部出る。


 そんな金でひっぱたくような話で両親の説得に成功。

 学校の先生は私には何も言わない。

 言おうにもそんな変わった処へ進学した実例が無いから。

 かと言って文句を言う度胸も無い。

 これはまあ、私のせいでもあるのだが。


 そんな感じの癖に。

 親も担任も何故か関係ない親戚もいざ私が魔法技術高等専門学校に合格したとなると色々自慢げだったりする。

 全国的な難関校だという事で。

 馬鹿馬鹿しさに涙が出そうだ。


 そうやって中学卒業にして無事地元脱出に成功した訳だ。

 これから向かうのは私にとっては逃れの街。

 街というか田舎らしいけれど。


 話しかけられると面倒くさいのでシートに座るなりアイマスクを装備。

 寝ているから話しかけるなよという私なりの武装だ。

 実はこのアイマスク、裏地を外す改造をしてある。

 だからちょっとだけ外が見える。


 私の隣に誰か座る。

 サイズから女性のようでちょっと安心。

 アブラぎっしゅな叔父様に圧迫される心配は無い訳だ。

 私は声もかけないし動きもしない。

 窓側だから動く必要は無いし、荷物も通路側からの方が入れやすい。


 そんな訳でダミーのアイマスクのまま、そのうち本当に私は寝てしまった訳だけれど。


 チャイムが聞こえた。

 それで私は起こされる。

 これはベルト着用を促す警報音。

 私は付けっぱなしだから関係ないけれど。


「あ、聟島だ」

 隣の座席と思われる近さから声が。


 マスクを取ろうか一瞬迷う。

 話しかけられるのは面倒くさい。

 でもこれから住む島を見てみたい。

 隣から聞こえた声は女性の声だったし、話しかけられてもすぐ着陸。

 私は好奇心に負けた。


 マスクを外して窓の外を見る。

 翼が邪魔だが確かに下に島が見える。

 島の半分の縦方向を目一杯使っているのが滑走路だろう。

 本当に小さい島だ。

 まあわかっていたけれど。


 飛行機は滑走路に近づいていく。

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