どのくらいの歳月を費やしただろう? 少なくとも数年そこらではない。

 幾人もの邪魔者が現れたが、俺と魔王の敵ではなかった。

 何せ魔王を倒せるのは俺の持つ伝説の剣のみ。その伝説の剣を持つ俺に、勝てる相手などいるわけがなかった。

 とうとう人も暮らせぬ最果ての地まで制圧して、俺と魔王はこの世界を完全に征服した。

 目標を達成するまでに、世界人口の三分の二を殺したが、まぁ結果オーライだった。

 それよりも俺は随分と歳を取った。数えてはいないが、凡そ四十歳くらいだろう。

 さすがに筋力も体力も落ち、若い頃ほど自由に剣を振り回せなくなった。

 だが三十五歳を超えた辺りで魔王が主導してくれたおかげで、私はあまり矢面に立たずに済んだ。

 魔王はすでに何百年かは生きているが、人間ではないので歳は取らなかった。

 ちなみに伝説の剣は、何年経っても打ち立てのような輝きを放っていた。

 何はともあれ、目的を達したのだ。当然盛大な祝杯が挙げられることになった。

「よくぞ、ここまで来たものだ」

 魔王は感極まったとばかりに少し涙ぐんだ。

「案外苦労しなかったな。もうちょっと大変だと思ったんだが」

 俺はリンゴを齧りながら、四十歳になっても生意気な口でそんなことを言う。

「お前のおかげだ、勇者。お前がいなくては私の目的が達成されることはなかった」

「そんなことないよ。第一、後半は魔王の方が先頭だったろうよ」

「前半にお前が活躍してくれたおかげだよ。本当に感謝する」

 魔王はそっと握手を求めて俺に手を差し伸べてきた。俺はそれに応じ、その手を握った。

「約束通り、世界の半分をお前にやろう」

「そりゃ有り難いが、どうやって半分に分けるんだ?」

「北の世界と南の世界の間に大きな壁を作り、二つに分断しよう」

「なるほど。それで一つは俺の世界、もう一つはお前の世界ってことか」

「そういうことだ。お前はどっちの世界がいい? 私は残りの世界をもらおう」

「――それじゃ俺は北の世界をもらおう」

 北の世界には、俺の故郷の国があった土地がある。そこにはあの湖がある。

「良かろう。それでは私は南の世界をもらおう。いやはや本当に今夜は気分が良い」

 魔王はにこにことわざとらしく笑いながら、ブランデーを呷った。

 俺はふと食堂の窓から、夜空を見上げた。

 満月の光を際立たせるように、その周りをたくさんの星の瞬きが取り囲んでいた。

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