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 場所は移って映画館。


 駅近くの商店街にある映画館は、人気の作品でも公開しているのか、なかなかの盛況っぷりだった。

 今までレンタルショップでDVDを借りていた僕としては、映画館に来て映画を見るのは久しぶりのことだったが、人が多いのでどこに行けばなにができるのかは、流れを見ていればだいたい理解することができた。


 デートといえば映画館。そんなイメージが僕にはある。


 というわけで、僕と羽根さんが最初にやってきたのは映画館だった。とはいえ、見るものは全く決めていないのだが。


「どうする、羽根さん? なにか見たいものあるかな……?」


「うーん、私は特には……」


「そ、そっか。じゃあ、どうしようかな……」


 並んでおいてあるパンフレットを眺めながら、僕は考えてみる。


 デートらしく、恋愛映画に手を出すべきだろうか?

 いや、いきなり恋愛映画を好きな人と見るのは、僕にはハードルが高すぎる。


 ならばアクション映画がいいか?

 しかし、羽根さんがスプラッターなのが苦手だったらまずいし……。


 ホラーならどうだろう?

 いや、ホラーは僕が無理だ。ひいひい言って涙目になっている僕の無様を、わざわざ自分から晒しに行く必要はない。


 だったら……。


「これなんてどうかな?」


 僕が手に取ったのは、『約束』というタイトルの映画だった。

 小説が原作で、とある事情で離ればなれになってしまった親子の愛を描いたヒューマンドラマ作品らしい。


 我ながらナイスチョイスだと思った。当たり障りなく、しかし、感動的なストーリーが望めるジャンル。これなら、お互いに満足することができるだろう。

 そう心の中でドヤ顔を決めていた僕だったが、羽根さんは予想に反して苦笑いを浮かべていた。


「うーん、えっと……言いにくいんだけど……」


 羽根さんはそう前置きをして、


「それ、この前見ちゃったんだ」


 と言った。

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