5
進が、満面の笑みを浮かべてクラスに戻って来た。
「お、オッケーもらったのか……?」
「そう! そうなんだよ!」
「ほ、本当にか? お前のことだから、聞き間違いとか、夢だったとかじゃないのか?」
「何度も確認したし、頬も赤くなるくらいつねったよ! でも、聞き間違いでも夢でもなかったんだよ!」
告白が成功したのかと勘違いしてしまうほど舞い上がる進を、俺は素直な喜びで見ることができなかった。
それくらい動揺していたし。
焦りを感じ始めていた。
「そ、そうなのか……」
さすがにあんな提案を呑まれるとは、思っていなかった。ことのほか、羽根さんは楽しそうなことに首を突っ込む、お茶目な一面があったらしい。
それはさすがに、想定外だった。
予想を超え。
常軌を逸していた。
こんなことになるなら、軽はずみにも進に「してみればいい」なんて言うんじゃなかった……。
俺はいまだ小躍りを続ける進に目を向ける。
友達になって長いが、こいつは恋になんて一切興味を見せなかった。
男が好きなのかと思っていた時期もあったほどだ。
恋バナなんてついこの間までしたことがなかったし、(抜けてるところは多々あるが)女の前でテンパるなんてキャラでもなかった。
でも、それもこれも全部、「だった」ということなのだろう。
全ては過去形で。
今は、現在進行形なのだ。
進は恋に興味を持って。
恋バナもするようになって。
好きな人もできて。
立派な恋愛をしているのだ。
……でも。
でも。
「なんで……」
ずっと一緒に、過ごしてきたのに。
「進のことがこんなにも、好きなのに……」
私を選んで、くれなかったの――。
穂純優樹。
女子高生。
恋に落ちて、一一年。
いまだに想いは実らず。
伝わってもいなかった。
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