「恋愛下手は高嶺の花と」(New、駄作になった)
1
「これ、落としたよ?」
夕暮れ時の学校。焼けるよなオレンジ色の夕日が照らす廊下に、その声は響いた。
鼓膜まで一瞬で清められるような、美しい音。その音に引きつけられてと振り返ってみると、今度は目の水晶体まで清められるような感覚に陥った。
なめらかな線を描く亜麻色のポニーテール。夕日に照らされてなお失われない肌の白色。スポーツをしているのかシュッと締まった健康的な肢体。くりっとした目に、琥珀色の瞳。……。
僕は心を奪われた。
奪われて、魅せられた。
ときめく暇もなく、一瞬で。
彼女の瞳の奥底に捕らわれ、また抜け出せないほどに。
「はい、どーぞ」
落としたのは黒のボールペンだった。彼女は、溌剌とした笑みを見せながら、僕の手にそっとボールペンを握り込ませた。
肌と肌が触れあう。
温もりと柔らかさが伝わってきて、僕の胸の鼓動は、ドクンッ、と一気に加速する。
「じゃあね! 気をつけて!」
上気する頬。オーバーヒートする頭。高鳴る鼓動。震える手。
僕の人としての機能は完全に停止してしまって、頭の中に残るのは、彼女の笑顔と手の感触だけになってしまった。
彼女が去っていった方向をただ呆然と見つめるばかりで、僕は「ありがとう」の一言も言えなかった。
暮れなずむ街、夕暮れ時の学校。焼けるようなオレンジ色の夕日が照らす廊下で、僕は、今なら重力に逆らうことができそうなくらいの高揚感に見舞われていた。
ああ、そうか。
これが、人生初の恋にして、人生初の一目惚れになるのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます