15
彼女は――寒河江美里は死んだ。紛れもなく、疑いようもなく、死んだ。僕に全ての思いを託して。
自殺の原因は、いじめと家庭環境によるストレスと推定されると、テレビでは報道されていた。ちなみに、遺書は、警察や家族には渡さなかった。寒河江さんが、『あなただけへ』と書いていたから。
警察の推測はおおよその的は外れていないだろうと、僕は思う。まあ、外れていようが当たっていようが、真実を知る僕には関係ないのだが。
我が校ではいじめ防止の目が徹底的に張り巡らされた。そこかしこに監視カメラがつき、大々的な面談やカウンセリングも行われた。
大事をとってか、板降からのいじめは――なくなりはしなかったが――それでも控え気味になった。いつまた復活するかはわからないけれど。
かくして、僕と彼女の物語は終わりを告げた。あっけなく、最悪の形をもって。なんの救いもなく、幸せなど一つもありはしない結末をもって。
けれど、彼女の思惑通り、僕の今後の方針は決まってしまった。だからこれからは、僕一人の物語が始まる。
惨めったらしく、逃げて縋って這いずり回る物語が。
いつか死が訪れて、彼女に胸を張って文句を言うための。
いつか、胸を張って「強くなった」と言えるようになるための。
そんな、物語が。
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