12

 翌日。


 いつもは寒河江さんに挨拶くらいはかけていたのだが、今日はどう顔を合わせたらいいのかわからず、僕は黙々として放課後を迎えた。


 今日は板降たちに絡まれなかった。どうせ、他の玩具で遊んでいるのだろう。だからといって、僕の良心が痛むことはまったくなかった。


 自己中だな、僕は。


 自己嫌悪に陥りつつ、僕は下駄箱に向かった。靴を出そうとロッカーの扉を開けると、そこには一枚の封筒が置いてあった。中には、どうやら手紙が入っているらしい。


 差出人の名前を探すと、裏側にきれいな文字で『寒河江美里』と書いてあった。そして、




『いつもの公園で読むこと。決して、学校では読まないで』




と注意書きがなされていた。


 なにかあったのだろうか、と僕は考えてみる。


 今日の寒河江さんにおかしなところは(見ていただけだが)なかったように思う。下校する時には教室にいたし、今日は轟あやめに呼び出されているようだったから、放課後は学校に残っているはずだ。


 いつもと変わらない、はずだ。


 もしかしたら、轟あやめによるいじめが、今日は一段とひどいものだったのかもしれない。僕は途端に不安になり、走って公園へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る