第53話
「四回死ね。『連撃死重奏』!」
師匠の闘技が発動し、怒涛の攻撃が俺に襲い掛かる。
死んで復活した瞬間にまた死んでを繰り返し、文字通り四回死んでしまった。
攻撃の隙を突いて、なんとか距離を取るも油断は出来ない状況だ。
「くそう、やっぱ師匠つえーわ……」
怒りで思考能力が下がっているとはいえ、それを補って余りある戦闘力が師匠にはある。
「カハアアアアアア……」
師匠は師匠で、なにやら手負いの猛獣のようなオーラを醸し出していてめちゃくちゃ怖い。
現在の残機は、俺が三つで師匠が二つだ。
俺が結構優勢だったはずなのだが、先程の闘技で差を縮められてしまった。
とはいえ、あと二回……たった二回、師匠を殺せば俺の勝ちである。
ちなみに師匠には呪いが効かないので、普通の攻撃魔法で倒すしかない。
師匠マジチート。
「……っぶね!?」
俺がどう攻めたものか考えていたら、師匠がいつの間にか目の前まで迫っていた。
心臓に悪いから瞬間移動はやめてほしい。心臓無いけども。
避けようと試みたが、そもそもの身体能力が違いすぎるために攻撃を喰らってしまう。
骨盤を砕かれ上半身と下半身が離れ離れになるが、それでは俺は死なない。
クルクルと上空を舞いながら、俺は下に居る師匠に向かって魔法を放つ。
「
全長一メートル程の漆黒の槍が師匠に向かって飛んでいくと、当然師匠もそれを防ごうとする。
が、
「がああああああっ」
突き刺さった
内臓を、骨を、脳を。体の中にある全ての物を
おそらく、師匠は今想像を絶する痛みに襲われている事だろう。
その後、師匠は吐血したかと思うとバタリと地面に倒れ伏す。
――――あと一回。
そして最後の一回は、師匠の復活を待たずに手を打たせてもらう。
師匠の手足に闇の楔を打ち込み、身動きが取れないようにし復活した瞬間に殺させてもらう。
「…………」
師匠の復活のタイミングを見計らっていると、それは突然起こった。
「え?」
パキリ。と、何かが割れる音がしたかと思うと、俺はいつの間にか死んでいた。
「な、何が……」
距離を取って復活し、何が起こったのか状況を把握しようと周りを見渡せば師匠が先程までと一変し静かな雰囲気を身にまとい立っていた。
馬鹿な……あの楔は、いくら師匠でも外すのに少し時間が掛かるはずだ。
しかし、実際は師匠はタイムラグ無しで楔を外し俺へ攻撃をしていた。
「……っ!」
俺は、本能で目の前に闇の障壁を張る。
すると、その直後に師匠が障壁にぶつかり激しい音が辺りに響く。
「おいおい……師匠、速すぎんだろ」
生き物というのは、どんなに頑張っても攻撃や移動の瞬間に何かしらの挙動が発生する。
しかし、師匠はそれすら無く完全なノーモーションで移動し、俺に攻撃を仕掛けてきたのだ。
「
障壁に阻まれていた師匠は、先程俺が使った魔法と同じものを発動する。
まあ、俺に魔法を教えた本人なのだから同じ魔法が使えて当然である。
三十の鏃に分散した
砕かれるのを予想していた俺は、既に準備していた魔法を師匠に放とうとするが、
「な! 居ねぇし!」
目を離さなかった。
確かに目の前に居たのだが、気づけば消えていた。
また後ろかと振り返れば、予想通りそこには師匠が居て、彼女を視認した瞬間にパキリと額の宝玉が割れる音がした。
その瞬間、俺が予め仕掛けていたトラップが発動する。
条件は俺が死ぬことで、術者の死亡を確認すると師匠を囲むように魔法陣が出現し、魔法陣の中から無数の剣が召喚されると師匠を貫く。
俺を殺した事で一瞬……そう、ほんの一瞬気が緩んだ師匠はその攻撃をモロに受けて死んでしまう。
こうして、茶番にも似た死闘は……俺の辛勝で幕を閉じたのだった。
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