第10話

 当主の座の前には錬が一人縛り付けられたまま正座をしており、その周りを横一列に一族重鎮達、そして反対側に月代、日輪そして陸が対座していた。


 片尾は錬によって普通の女の子並に無力化されていたが、念のためと考えられる最強の結界の中に閉じ込められて正門前の広場に置かれている。


「おめおめとよく来れたものだな……裏切り者の小僧が!」


 かつては一瞬だけとはいえ錬を「婿殿」と呼んでいた有藤当主が必要以上に怒鳴りつけていた。


 無能なだけでなく、里を裏切った小僧と娘が許婚の約束をしていたことを他の者に突っ込まれないように錬を罵ったのだ。


「裏切り者と言われても元々俺はこの里の人間と思われて無かったですからね……他の方々もそう思いませんか?」


 悪びれない錬の態度に一同が言葉を失う。


 確かに裏切り者の息子であり、大した能力も無い錬を一族の者達は下働き程度の扱いしかしていなかったが、彼らが言葉を失ったのはどんな命令も何の感情も見せずに従っていた錬の変貌に驚いたからである。


「うぬぼれるなよ小僧……大妖片尾の従者になったとはいえ、お前程度などすぐにでも殺せるのだぞ?」


 物騒な言葉を吐いて重鎮衆の一人が睨みつけるが、錬はその視線を涼しそうに受け流している。


「里を裏切ったのはお前が里の者に仲間扱いされずに卑下されていたからか?」


 鈴音が凛とした声で問いかける。


「き、きっと魔が差しただけなんだと思います……あるいは片尾にそそのかされたとか……きっとそうに……」


「月代、黙れ」


 有無を言わさぬ鈴音の言葉に月代が口をつぐむ。


「錬よ……もう一度聞くぞ。お前が里を裏切って片尾の封印を解いたのは我らに対する憤りゆえか?」


「違います。元々この里のことなんて最初からどうでもいいことですから」


「何だと貴様!」


 重鎮の一人が立ち上がりかけたが、鈴音の「控えなさい」の一言で座りなおす。


「最初からとは……この里に来たときからということか?」


「そうです。両親が死んで身寄りがなくなった者で、まだ食い扶持も稼げなかったですから仕方なくここへとやってきた……ただそれだけです」


 自分は生きていくためだけに里に来ただけであると言い放つ錬に場が静まり返る。


「片尾の封印を解いたのは何故だ?」


「俺の両親の例もありますので……それに俺には皆さん知っての通り、追っ手を撃退する程の能力がありませんので、片尾様に協力していただいて里を抜けようと思ったのです」


 錬の両親の例……つまり里を抜けたところで追っ手がかかるのは必然であり、それらと戦って退けさせられる程の力が無いので、稀代の悪妖の封印を解いてその庇護によって里の追っ手から逃れようとしたという錬の言葉に重鎮衆の顔が怒りでみるみる変わっていく。


「なるほど……つまりお前は里から逃げ出すことを前から考えており、この月封の儀式を行う今日この日にそれを実行したしたということか……しかし片尾の封印を解くなど大きな賭けだとは思わなかったのか?お前も悪妖片尾の伝説は知っておるだろうに」


「ああそういえばそうですね……まあ、それで片尾様が私を殺そうとしたところでそれはそれでよろしいかと思ったもので……」


「なっ……なんという事を……」


開祖ですら滅ぼしきれなかった片尾復活を画策し、それによる自身の身の破滅すらもそれはそれでと言い切ってしまうそのいい加減さに全員一瞬言葉を失う。


 それによって一族が滅びてしまうかもしれなかったというのに……。


 重鎮衆は怒りに満ちた顔で錬を睨み、陸は黙って成り行きを見守っていて対照的に月代と日輪が青い顔をして錬を見ていた。


 なぜ錬はただでさえ命さえ危ない状況でどうしてそんなことを言うのだろうか……仮にそれが事実だとしてもそんなことを言ってしまえば最悪な事になるのは目に見えているのに……。


 月代が困惑していると、


「それでは最後に聞こう……。錬よ、お前の主であった月代と許婚であった日輪……この二名もお前にとっては生きていくための術の一部であったのか?」


 はっとした顔で月代と日輪が顔を上げ、鈴音の顔を見て、それから錬の顔を見る。


「……仰る意味がわかりません」


「言葉どおりの意味だ。お前は里に来たのは生きていくためで元々里のことなどどうでも良かったと言ったな?」


「……ええ、まあ」


 曖昧に錬が答える。


「なるほど両親の命を狙い続けた里を嫌っておるのは理解できるし、お前に冷たかった里の者達に対して情がわかないのもわかる……それならば主従として共に苦労してきた月代……許婚としてお前を慕っていた日輪もお前にとっては何の情もわかないただの生きるための術だったのかのう……最後に聞かせてはくれまいか?」


「……それは……」


 チラリと錬が月代と日輪を見た。 二人とも何を言われても覚悟は出来ているという風に真剣な顔で見続けている。


 覚悟を決めたように錬が口を開いた。


「それは……月代様は能力もずば抜けており、皆から好かれております最高の主でした。日輪も少々口うるさくはありましたが、無能なる私に対しても許婚として接してくれ、非才の身をどうにか物にしようと努力してくれました。感謝しておりますし最高の許婚でありました……ですが」


 鈴音の眉がぴくりと上がる。


「彼女らは最高の人たちでしたが、最高であるだけに俺とは決して相容れない存在であると認識しています……つまり彼女らと俺は永遠に理解しあえない間柄だと思っています」


「そうか……」


 答えは簡潔であった。


「それではこの者の処遇を考えようと思う……」


 その一声で重鎮衆から「殺せ!殺せ!」という声が上がる。 それに分家の者達も賛同している。


 とりわけ娘の許婚にしていた有藤当主は一際大きな声で「この恥知らずを殺してしまえ!」と大きな声で叫んでいた。


 場は完全に殺せという言葉に支配されている。


当の錬はその声に何の反応もせず黙って目をつぶっている。


「……皆の気持ちはわかった……だがまだ意思を表しておらん者達がおるな」


 そういって鈴音が見た先には月代、日輪、陸がいる。


「僕は賛成です。彼は昔から僕らを謀っていたわけですから……」


 表情を変えずに陸が錬の顔を見ながら処刑に賛成する。


「日輪も同じだと思いますよ……特に妹は彼の為に色々頑張っていたんですから」


「そうなのか日輪よ……」


「私は……」


 日輪は一言それだけ言うと真面目な顔になり座っている錬の所へスタスタと歩いていき強引に錬の顔を横に向けさせると勢いよくその頬を張り飛ばした。


 一同その行動に呆気に取られている。


「貴方は馬鹿なのですか!どうして最後までそうなのですか……貴方がそういう態度でいるのなら私も最後まで付き合いましょう……一同の皆様!我が夫の不始末は妻の責任、錬様が処刑なされるのなら私も処刑されとうございます」


「なっ……日輪、何てことを」


 兄である陸が思わず呟いた。


「ふざけるな!日輪、自分が何を言っているのか!」


「はい!わかっております!私は妻として錬様に殉じようと思いますが、それが何か?」


 毅然とした態度で錬の横に正座をする。 そして信じられないものを見たような顔をする錬に、


「……貴方もなんて顔をしているんですか、これが私が出した結論です。貴方が私をいくら拒絶したところで理解しあえないなんていくら言ッたところで私が育んだ気持ちはそんなものなど関係なく強いのですよ」


 ニコリと微笑み返す。


「あ……あ……痛っ!」


 誰かに思いっきり頭を後ろから叩かれた。


 錬が後ろを振り返ると月代が真面目な顔で立ち、もう一度錬に拳骨を振り下ろす。


「これでわかった?あんたがどう思ってようが、私達にはそんなの関係ないのよ……理解しあえない?笑わせるじゃない……理解なんかする必要ないわ、私達がそう思えないくらい教育してあげるから……だからそんな悲しいこと言わないでよ」


 最後の言葉は泣き声になって錬に泣きついてくる。


 二人の行動に困惑した顔をしている錬の横で日輪がムッとした顔をしているのを見て鈴音は苦笑してしまった。


「なるほどのう……二人は錬の処刑には反対か」


「馬鹿馬鹿しい!小娘たちの戯言など気にしていられるか!」


「全くだ!日輪は頭が冷えるまで土蔵で入ってもらうぞ!誰か日輪を連れて行け!」


「馬鹿者!静まらんか!」


 謁見の間に全てを吹き飛ばすような大声が響き渡る。


 当主の座に座る鈴音の顔には当主としての威圧的な雰囲気が出ていて、その場にいる者達が恐縮して座り込む。


 ただ三人だけは威風堂々とした姿で泰然としていた。


「……月代に日輪よ、錬がこれから受けるであろう罪を共に受ける覚悟はできておるのだな?」


 じろりと威圧するように二人を見るが、その目にもひるまずに二人が声をそろえて、はいと言い切る。


「そ、そんな……何故お前が共に受ける必要が……」


 初めて有藤当主としての顔が崩れて父親としての顔を覗かせた父に日輪が笑顔を向ける。


「お父様……今まで育てていただいてありがとうございました。日輪は妻として夫に従うまでです。どうか笑顔で見送ってください」


「日輪……その覚悟は変わらないのかい?」


 苦渋に満ちた顔で陸が問いかけるが、日輪の変わらぬ笑顔を見て何もいえなくなって俯いてしまう。


「私も錬が罰せられるというのなら、共に受ける覚悟はあります」


 月代も背筋を真っ直ぐ伸ばして宣言する。


「お前こそ何も関係ないだろうが!何故次期当主であるお前が罪を一緒に受けるのだ!」


 重鎮衆の一人が叫ぶが、月代はニヤリと笑ってはっきりした声で言う。


「従者がしでかしたことは主である私の教育的責任がございます。それに重鎮衆の方々は常々仰っていたではないですか……ちゃんとした従者を連れていなくては主もその程度と見られると、どうやら私はその程度の主だったようですので……共に罰を受けることに何の問題がありますか?」


「ぐぐ……馬鹿らしい!鈴音殿よ、この馬鹿らしい口を聞く者たちに道理を言い聞かせてくれ!」


 たまらず鈴音に下駄を預けた重鎮によってその場の決定は完全に鈴音に預けられた。


 鈴音は黙って目をつぶっている。


 謁見の間には押しつぶされそうな緊張感が広がっていき息苦しささえ感じられる。


「錬に死を与えるというのなら自分達にも与えよと言うのだな?」


「はい……いつでも覚悟は出来ております」


「私も……アホな従者を持つと苦労します」


 そういって二人とも懐から小刀を取り出して自身の前に置く。


二人に挟まれた錬は目を丸くして狼狽している。


「全く女子にこれだけのことを言わせるとは錬も罪の男よの~、それでどうする錬よ?お前が処刑されてしまうとわしの可愛い孫が二人後を追ってしまうのだがな……」


 鈴音が悪戯っぽく笑いながら錬に話を向けるが、


「いや……その……なんでこんな話になっているのか……こんなはずでは……」


 完全にパニックを起こしているのを見て鈴音があはははと大きな声で笑う。


その行動に驚いた重鎮衆の一人がゴホンと咳払いをして、言いにくそうに口を開く、


「その……鈴音殿……錬の処罰をですな」


「おお!そういえば錬よ……お前が死んだら片尾はどうなるのかのう?」


「それは……今はあの方の力を奪っていますが、俺が死んだら奪った力はあの方に戻ります……元々契約した主従契約での主の力の一部を使えるというのを利用して奪ったものですから」


「つまりお前が死んだら片尾から奪った力は全て元に戻ってしまうのじゃな?」


「は、はい」


「なるほど、お前に余裕があったのもそれがあったからか、妙に落ち着いているから何かあるとは思っていたがな」


「ちょっと待って!それじゃ錬は殺される心配が無かったから、わざと捕まったってことなの?」


「ま、まあ……出なければあそこで片尾様の能力を奪う理由がないですから……こうなっては仕方ないので交渉でこの里を出ようかと……痛ああああああぁぁ!」


 思いっきり右頬に平手をかまされた錬が叫ぶ。


そして振り向いた先には日輪が涙目で待ち構えていた。


「それじゃ私達の覚悟はなんだったんですか!ひどすぎます!馬鹿っ!」


 そういって思いっきり平手を錬の左頬に叩きつける。


 まるで痴話げんかをしているような三人を鈴音が心底可笑しそうにアハハと笑っていると、重鎮衆の一人が呆然と問いかけた。


「そ、それじゃ……小僧の処罰は……?」


「錬を殺したら奪った能力が全て片尾に戻るのでは我らが破滅してしまうからの~」


「そ、それじゃどこかに閉じ込めておけば…」


「錬~、奪った能力はいつでも片尾に返せるのであろう?」


「は、はい……そうですが……痛っ、止めてくださいよ、日輪も頼むから……痛いから…」


「そういうわけで錬には何か別のことを考えておかなければならないの~、はてさて何をさせようか……」


「そんな!裏切り者を許すなど……」


「それではどうする?錬を殺したその後には我らが後を追うことになるのだぞ?」


「ううむ……!」


 抗議していた重鎮はそのまま黙りこんでしまう。


 他の重鎮たちも何か言いたいが何も言えないでいる。


 彼らも力を取り戻した片尾には勝てるはずが無いことをわかっているのだ。


 ただ理屈はわかるが納得するわけにもいかずにうんうんと唸っているだけだった。


「……そんな結論は納得いきませんね」


 冷たい声で誰かが発した。


錬が一瞬緊張した顔で振り向くがすでに後ろに周り込んでいた。


「止めろ!」


 再度、見た目にそぐわないほどの大声で鈴音が叫ぶ。


 その命令が聞いたのか錬の首筋の直前で短刀がピタリと止まった。


 刃先が当たっている部分からツーと血が一筋流れる。


「兄様!」


「陸さん!」


 日輪と月代が同時に名前を呼ぶ。


「陸よ……座に戻れ」


 鈴音が真剣な顔で陸に命令をするが、当の陸はその命令が聞こえないかのように錬の首筋に短刀をさらに突きつける。


「……命令されてますよ陸さん」


 両手を拘束された状態で、さらに短刀の刃先を突っ込まれながらも無表情の顔で錬が陸に話しかける。


「余裕だね、錬君は……僕がもう少しこの刃先をつけば死ぬのにね」


「計画が失敗したのならいっそ死んでしまっても構わないと思っていたんですけどね……今は死にたくないです」


その間も鈴音をはじめとして日輪や月代が止めるように叫んでいるが、無視し続けてさらに話し続ける。


「そうだよ……前から無能の癖に冷めた目をしている君が気にいらなかったんだよ……無能の癖に日輪の許婚?ふざけるなよ、お前見たいな奴が僕の義弟?冗談じゃない!しかも人の物を横取りしやがって……」


 ブツブツと言い続けている陸は錬に刃を突きつけたまま謁見の間から出て行く。


 その後を謁見の間にいた全員が追いかける。


 怨嗟の声を上げながら正門前の広場へと向かっていく。


 首筋にずぶりと刃先が刺されたまま錬も黙って引きずられるままにする。


 やがて正門前の広場に着くと、ピラミッド型の結界の中で不貞腐れたような顔をしていた片尾がいた。


 周囲にいた倒魔師たちは陸が錬を連れてきたのを見て、広場で裏切り者の処遇を決めるのだろうと思って誰も陸を止めずにいて、進行方向を開けて道を作っていた。


「まるで凱旋式だな」


引きずられながら錬がそんなことを呟く。


「そうさ……僕は凱旋をしているところなのさ、里を救う者としてね。お前を殺しても里を救う方法なんてあるんだからな」


 血走った目で陸は錬を引きずり続ける。


 やがて片尾が錬のことに気づいて結界の内側から怒鳴る。


「この馬鹿従者が!主の能力を奪い取っておいてどの面下げてやってきたんじゃ!」


「しょうがないじゃないですか全員殺すって言われたんじゃ……」


 軽口を叩く錬が乱暴に地面に叩きつけられた。


「ほら見よ!だからあの時皆殺しにしてればこんな目にあわずにすんだのだ!死ぬ寸前まで後悔し続けろこの馬鹿!馬鹿従者!」


 地面に転がる錬に結界の内側から馬鹿馬鹿と罵倒しているその姿はまるで哀れな愚者が仲間割れを起こして醜くわめいているように見え、周囲の者達の笑いを誘った。


 嘲笑の中で悔しそうにしている片尾の結界に陸がゆっくりと近づき腰を落とす。


「なんじゃ小僧……わしに何の用じゃ」


 毒づいた態度を取る片尾に微笑んで陸が結界に手を伸ばす。


 瞬間、結界が破壊され内側と外側の世界が繋がる。


 意外そうな顔をしている片尾にもう一度ニコリと陸が笑いかけ片尾も引きつった笑いを返して、目の前に転がっている錬の頭を踏みつけた。


「どうじゃ思い知ったか!この裏切り者め、何か言い訳することがあるか!そのまま答えてみよ!」


 罵倒しながらグリグリと頭を踏み続ける。


「まあまあ……それくらいで」


 陸が背中から片尾を持ち上げて錬の頭の上からどかす。


「な、何をするんじゃ!無礼者!」


「はいはいわかりましたよ~、はいどうも失礼しました」


まるで幼児を扱うように持ち上げた片尾を下ろす。 小さくなったとはいえ、小学生の外見を持った片尾にする態度ではない。


「覚えておれよ……この馬鹿から力を取り戻したらお前を念入りにバラしてやるからな」


屈辱に震える顔をして見上げる片尾を保護者のような顔で微笑みながら陸がもう一度『はいはい』と答えた。


「あの……陸様」


 まるで歳の離れた妹をからかう兄のような陸の後ろからおそるおそる少年が声をかけてくる。


「うん?なんだい」


 視線を向けずに片尾の相手をしている陸が返事をする。


「その……よろしいのですか……この……片尾を……解放してしまって」


「勝手に呼び捨てにするな!」


 憤然と抗議する片尾に少年がビクっとして離れる。


「うん問題ないよ……いまこのお方は錬君に力を取られて普通の女の子とかわらないからね」


「ああ……そうなんですか…安心しました」


 周囲の面々が安堵の顔を浮かべる。


彼らの一部には月封の儀式の時に動物に変えられている者達がおり、片尾の恐ろしさを身に染みている。


それゆえに陸が結界を解いたことの意味がわからずに困惑していたのだった。


しかし月封の儀式以来彼らの恐怖の存在であった片尾にはその力は無い。


確かに片尾が本当にあのときのような力があったら捕らえられることはないだろうし、ましてや自分達が生きているはずがない。


 周囲の面々から乾いた笑いが漏れる。


「でもこうすれば力を取り戻すよ」


 しゃがみこみ、持っている短刀で錬の心臓の辺りを背中から突き刺す。


「うっ」と一声上げて錬が動かなくなり、地面に赤い液体がじわじわとにじみ出てきた。

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