プロローグ②

三章女王の友達作り②

  狭苦しい飛行機から降りると空は晴れ渡っていた。


 パスポートを見せるとまだ若い入国審査官はニコリと笑い、片言の英語で「ようこそ日本へ」と言う。


 そんな彼に流暢な日本語で「ありがとう」と微笑んだ少女は小さなバッグを持ってゲートを出た。


 そして脇目も振らずに三番バス乗り場へと向かい、タイミングよく着いていたバスに…は乗らず、ベンチに座り込んでバッグをゴソゴソと覗き込む。


「時間通りだな…」


 隣に座っていたサラリーマン風の男が口を動かさずに少女に声をかける。


「はい、今回のターゲットの情報を教えてください」


 少女もバッグから何かを探しているそぶりのまま同じように唇を動かさずに返事を返した。


「詳細はそこのゴミ箱の蓋裏に置いておいた、それとすでに目標の学校への入学手続きもしてある」


 男は用件だけを言うとそのまま立ち上がり立ち去る。


 少女は頷きもせず、男が去るのを見届けた後にゴミを捨てようとする体で入り口に手を入れて蓋裏に貼り付けてあったチップをすばやく手にとってポケットに入れると振りかえらずバスに乗り込んだ。


 その間、僅か数十秒。 その手馴れた動きが少女達がただの人間では無いことをあらわしているが、その正体に気づくものは誰も無く、国際空港の午後はいつもと変わりなかった。



 

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