第1章-6 馬車って言ったやん!
気まずい雰囲気は回復しないまま、どちらも声を出さずに何十分たっただろうか。
ロリが馬車の到着を伝えに来たことで会話が始まる。
「では出発の準備の方をお願いいたします」
「あ、もう準備してあるよ」
またすごい謝られた。このへんの噛み合わなさが、気まずい原因なんだろなぁと思いながら部屋を後にする。
馬車は車だった。車というのは自動車のことである。トラックに荷車を引っ張らせている格好だ。
実は馬車に興味があったので少し残念。
「最高級の馬車を準備させていただきました」
と、メイド長。見て分かる。車も荷車もとても豪華なのが素人でもわかる。チラっと見える中も絨毯が敷かれソファーが設置してある。
「これを受け取ってくれたまえ」
当主がそう言うとメイド長が小さい箱、指輪の箱みたいなのを差し出した。
「私の家紋が彫ってある徽章きしょうだ。」
指輪の箱から取り出したのはバッチで、薔薇のような絵が彫ってある。多分金と銀でできている。
「普段は人目に触れないように保管しておいてください」
メイド長曰く、価値が高いので見せびらかしていると盗まれる、とのことだ。
さっさと売り払うことも検討しよう。
挨拶も終わって俺は荷車に乗り込む。移動には丸一日かかるようだ。
広い車内に一人というのはなんとも居心地がわるい。
車の窓の外には、石や金属で出来た平屋建てが並んでいる。木材は少ないようだ。
本当に馬が引いている馬車はたくさんあるが車は見ない。珍しいのか色んな人がジロジロ見ている。気まずいので窓をカーテンで隠す。
城壁では馬車がたくさん並んでいた。先頭では兵士がチェックをしているようだ。俺たちはその並んでいる馬車を抜いていく。優先されているようだ。
兵士のところには姉が走っていった。
今気がついたが後ろから付いてきていたようだ。息が荒いからずっと走ってきたのかもしれない。本当に心が痛い。
兵士の中で偉そうな人が姉と一緒にこっちに来て顔を確認していった。兵士は「安全な旅になることを祈っております」と丁寧に対応してくれ、他の馬車と別の出口から出してもらった。
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