第1章-5 朝のごあいさつ

 朝、まだ薄暗いうちに目が覚めた。昨日寝たのが9時前だからだろう。

 ひと晩寝てもでかいベッドだし部屋に電灯はない。照明具に魔法のライトをかける。

 浄化を全身にかける。朝シャンしたみたいなサッパリ感だ。歯もツルツルになる。

 椅子に引っ掛けてある学ランに着替える。着替える前に浄化をかけると洗濯したあとみたいに綺麗になった。この浄化ってすごい便利でいい


 スマホを開いてもやはり電波は一切入ってこない。時間は5時を示していた。そりゃ暗いわけだ。


 窓は木枠のガラス製。ガラスは分厚いがとても澄んでいる。

 この建物はとても大きく、城に近いようだ。人の背丈を超えるくらいの柵で囲ってある。


 城下町のようなものが近くに有る。一番遠くに見えるのは壁、城壁のようなもので囲んである。

 外に人はいない。窓を開けても音はほとんど聞こえない。時折吹く風くらいだ。

 風情を感じるくらいには、まだ自分に落ち着きはあるようだ。


 暫く窓から外を見ていたら姉が入ってきた。


「お、遅れて申し訳ありません」


 まだ6時にもなってない時間だ。気を使わせてしまったようだ。


「いやいや、俺が勝手に早く起きただけだから」


 ホッとした表情をとっておはようございます。と挨拶をくれた。

 食事はもう少し後になると伝えたあと部屋の掃除を始めた。居場所がなくてベッドの上に逃げる。

 なぜ俺相手にそんなにビクビクするのだろうか。


 居心地が悪くなってトイレに逃げると途中でロリにあった。


「おはようございます。朝早いんですね」

「おはよう。まだ眠そうだね」


「うん。朝弱いんだ。ユウ様は朝がお早いんですね」

「うん。早起きは割と得意かな」


「羨ましいです。 では仕事に向かうので何か御用がありましたら遠慮なく申しつけください」


頑張ってね。と、一言かけて別れる。ロリとはそれなりに友好関係を築しつつあるようだ。



トイレから戻ると、姉が食事の準備が終わったので、今から朝食だと伝えた。ダイニングルームには、当主と奥さんが既に揃っていたものの、奥さんはまだ寝むそうだ。俺に合わせてくれたのだとしたら申し訳ない。

 会話は少なく、食事の最後に「うちのパンをお気に召してくれたみたいだから」と袋いっぱいのパンを貰った。ほとんどが姉妹行きの予定。


馬車が来しだい俺はここを出るらしい。そして夕方にサクラサクに到着予定のようだ。馬車が来るまで部屋で待機しているように言われ素直に従う。




暇だ。姉が部屋の端で待機している。ロリは部屋にいない。何か仕事をしているのだろうか。気まずい空気になる姉より、ロリのが話しやすかった。



「すいません。ただの興味なのですがあなたについてお伺いしてもよろしくでしょうか」


 気まずい空気に耐えられなかったのは姉も一緒なのかもしれない。

 話しかけてくれてすごく助かる。


「なんでも聞いてくれていいよ」


極力普段通りの、声で返事をする。


「ユウ様はあちらの世界では貴族か何かでいらっしゃいましたか」

「いや、ただの平民だしお金持ちとかでも無いよ」


「そのお召し物はとても上等なものに見えますが」

「これは学ランって言ってね、学校に行くときに男子はこれを着る決まりがあるんだよ」


 学校によって違うけど、いい説明ができそうになかったので省く。


「学校に行く、と言うのは貴族や大きな商人の息子だけではないのですか」

「日本では15歳までは学校に行かないといけない決まりがあるんだ。多くの人が18歳まで学校に通ってるし半分は22歳まで学校に行ってるよ」


教育には日本と大きな違いがあるようだ。日本より遅れた文明のようだ。


「羨ましい」


姉はボソッと、呟いた。本音部分なのだろう。学校に嫌々、義務で通っていた俺には痛い言葉だ。



会話はそこで途切れ、また気まずい空気が部屋を支配した。

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