第1章-7 高級車から暴走車へ乗り換え
壁、城壁を出てすぐに車を止めてもらった。姉に話しかけようとして、今気がついたんだが、名前を聞いてない、と思う。車から降りて話しかける。
「君は乗らないの」
姉は苦笑いというか悲しい顔をして「私達がその馬車に乗ることはできません」と答える。多分奴隷、だから。
「俺が乗って欲しいって言っても無理なの?」
これくらいしか方法がない。
「それは……」チラっとっ運転手を見る。運転手も困った顔をして降りてきた。
「この馬車は最高級なものです。奴隷を乗せるというのはちょっと、」
ごねても無理そうなので「車酔いした」と、俺も歩くことにした。
そうしなければスピードを下げる事もしない。あと、姉の持っていた荷物だけは乗せてくれた。
名前を聞いて世間話をしても30分と持たずに、またあの気まずい雰囲気になった。きつい。
名前はランというそうだ。一番下の妹はシオンだと。
これで3姉妹全員の名前を聞いたことになるのか。
上からラン、リロ、シオン。日本人でも通用するし、外国でも通用しそうだ。
時折馬車とすれ違う。
ジロジロ見られるのは、高級な馬車なのに奴隷に合わせてペースを下げているかららしい。
車の利点は、馬と違って長時間走らせても潰れないことだという。車だし当然だろとは言わなかった。
この2つしか運転手とは話していない。
昼ごはんを挟んでもう半日以上も歩いているのにまだ付く気配はない。
この半日歩き続けて目にしたのは田んぼに畑、広大な平原に時々通りかかる馬車程度だ。
なにせ景色の変化が少なく退屈だ。
それに下が土なので歩きにくくてしょうがない。俺だけが息が上がってるようだ。
悟られないように踏ん張るも、ペースを下げてるのは明らかに俺のせいで申し訳ない。
そうこうしていると夕日が差し込む時間になった。
これ以上進むのは危険とのことで野宿の準備を始める。姉と運転手はテキパキと準備を進めていく。
運転手は姉に対して嫌っている様子はなく、俺以上にちゃんと会話をしていた。
姉は俺が苦手のようだ。
一人、のけものになって暇をしていたら、別の車が近づいていることに気がついた。
しかも戦車というか装甲車のような見た目で物騒だ。
姉と運転手も気がついたようだが特に警戒をするような様子はない。危険はないのだろう。
その装甲車はうちの車の隣につけた。しかもドリフトで。
「遅いからむかえにきたよーん」
装甲車から降りてきたのは、30歳位の綺麗なおば、お姉さんだ。多分日本人。
「君が今回の召喚者だね。サクラサケの美鈴だよーよろしく~。さーみんな待ってるから急いでいっくよー」
装甲車に乗るように促される。
「すいません。この方は私たちがサクラサケまでお送りすることになっておりますので」
姉はきっぱりと断った。俺が返事をすべき場面だったのに、ごめん。
「ならお嬢ちゃんもこっちの車に乗っていきな。そのほうが早いから」
姉は、私は奴隷なのでと今度は言い淀みながら断る。
「帰りも送ってあげるから気にしないで。さっさと乗りな」
結局俺と姉が装甲車に乗って、運転手さんはもうお役目ごめんなので、帰ってもらうことになった。
装甲車の中は意外と広く、左右に長椅子が設置されていた。
運転席との間に仕切りはない。運転席には俺と同い年くらいの青年が座っていた。
免許を持ってないからよくわからないが、明らかに運転席についているべき物が足らない気がする。
メーター類は一切ないしPとかDとかのやつもない。ゴーカートみたいだ。
「すわってすわって。んー中学生くんと奴隷ちゃん。あの子運転荒いから」
ものすごく荒い運転のなか自己紹介をした。特に高校3年生でもうすぐ大学生であることを強調して。
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