竜神探闘⑱
(く……速すぎる。それに重すぎる)
アディルはジーツィルの斬撃が先程までとは桁違いである事に戦慄する。
(仕方ない。竜公月華ではここが限界か)
アディルはチラリと
すでに式神の多くは
(これは、いけるか?)
アディルは
「そうか、仕方ないな。俺も切り札を出すとしよう」
アディルの言葉にジーツィルは踏み出そうとした足を止めた。
「ほう?」
「竜公月華はな龍脈から気を引っ張ってきて自分の中に取り込み戦闘力を上げるという術だ」
「龍脈?」
アディルの説明にジーツィルは訝しむ。アディルはジーツィルが話に乗ってきた事を幸いと出来るだけ自然な感じで天尽を地面に突き刺す。
「竜公月華は簡易的なものだ」
「簡易的?」
「ああ、竜公月華にはさらに上位版の術が存在する。その名も
「竜帝宝華だと?」
ジーツィルの反応にアディルは小さく笑う。
「本来ここで使うつもりはなかったんだがな。ところが使っても大丈夫な状況になったから使う事にしたというわけだ」
アディルの言葉にジーツィルは訝る様子を見せる。アディルの言葉はジーツィルにとって意図の読めないモノであった。
「まぁ術理を説明するのは面倒だし、そもそも敵に説明するモノじゃないからな」
「それならどうしてここで竜帝宝華の名を俺に告げた?」
ジーツィルの言葉にアディルはニヤリと笑って言う。
「簡単だ。お前がどうして敗れたのかを知らせてやろうという優しさだよ」
「貴様……」
アディルの言葉にジーツィルは怒気を発した。アディルの体から発せられる威圧感が確かに増しているのを本能が察しているのだ。
「さ、おしゃべりはこの辺にして決着をつけようじゃないか。それからお前達もな」
アディルはジーツィルだけでなく
アディルから放たれる威圧感は
アディルが構えをとると奇妙な静寂が周囲に訪れた。そしてアディルから放たれる威圧感が一気に増した事を戦いを見ていた者達は感じ取ると今度はガチガチと歯が鳴り始める。
それがアディルが竜帝宝華を発動したタイミングとピタリと一致する。
ふ……
アディルの姿が消えたと思った瞬間にアディルの斬撃がジーツィルの首を刎ね飛ばしていた。
あまりにも速く、そして静かな斬撃を見切る事の出来た者など誰もいない。ただ、結果のみを見せつけられたという感想しかなかった。
ジーツィルの体が崩れ落ちる事を
(やはりな、首を刎ねるというのは大した意味はないな)
アディルがそう心の中で呟きつつ斬撃を胸部に放つがジーツィルは後ろに跳んで躱した。後ろに跳んでいる間に地面に落ちた首が浮かび上がるとそのまま元の位置に戻った。
「やはり騙せなかったな」
ジーツィルの顔にはアディルを嘲弄する表情が浮かんでいた。それを見てアディルは別に不快感を表すことはせずにニヤリと嗤う。
「タネがバレている手品を披露して何が自慢なんだか」
「なんだと?」
「しかし、お前って意外とセコイよな」
アディルは呆れたような言葉を発してから上段から天尽を振り下ろした。
キィィィィン!!
上段からの斬撃を受け止めたジーツィルは忌々しげにアディルを睨みつける。アディルはその表情を見てまたもニヤリと嗤った。
「竜帝宝華を使えばお前と互角に戦える事は証明されたな。まぁ、だから何だという感じだがな」
アディルの言葉にジーツィルはギリィと奥歯をならした。
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