竜神探闘①
皇帝であるラディムが今回の
選帝公家の関わる
アディル達は転移の魔法陣により会場へと転移する。
アディル達の眼前にはまず広大な平野が目に入り、左側には森林地帯が広がり、右側には川が流れ橋が架かっていた。
「ここが会場か」
「森林地帯、平野、川、橋……か。地形を上手く使って有利に事を進めたいな」
「だな」
アディルとシュレイが地形を見て作戦を考える。
「まず抑えるべきは河原かな」
「理由は?」
「単純に投石用の石を確保しやすいというのがその理由だ」
アディルの言葉にシュレイは河原の方に視線を向ける。
「なるほど石を使うか。だが竜族に対して投石が役に立つか?」
シュレイの言葉にアディルはニヤリと嗤って頷く。
「ああ、その辺の事は任せて欲しい。役立たせるさ」
「そうか」
シュレイはアディルの言葉にそれだけ言うと仲間達に視線を移した。アディルの意見を採用するかどうかの確認である。
シュレイの視線の意図を正確に察した仲間達は了承の意味合いを込めて頷いた。
「よし、それじゃあ俺達は河原を抑えると言う事でいこう」
アディルの言葉に全員が頷いた。
「お、相手も来たみたいだな」
アディルが言うと全員が視線を動かした。平原の向かい側にイルジード達が姿を見せた。その数はざっとみた所約百であった。
イルジード達はすぐに陣形を整え始める。一糸乱れぬ行動の手本というべき動きであり、相手の技量が凄まじく高いのは間違いないだろう。
「強敵ね」
エスティルの言葉にアリスは頷いた。
「そうね。まぁ
アリスは当然のように言う。レグノール本家出身のアリスは当然ながら
「あそこにいるのが
アリスがウルグの名を呼ぶときに隠しようもない憎悪の感情が込められていた。アリスの話では母のリーリアを直接手にかけたのはウルグであるという話だったので当然の事であろう。
「なるほどな。あれがアリスの母の仇か。じゃあ、あいつがイルジードか?」
アディルが指差した先に立派な服装の青年が立っていた。少々年齢が若いようにも見えるが竜族は見た目で年齢が分かりづらいので尋ねてみたのだ。
「……違うわ。あれはイルジードの息子のレナンジェス。私の従兄よ」
「あいつも仇なのか?」
アディルの言葉にアリスは首を横に振る。
「ううん、レナンジェスはイルジードが父を殺した件には無関係よ」
「ねぇアリス、それならあの女の子は?」
ヴェルが指を差した先には武装した女の子が立っていた。
「そんな……ルーティアまで……」
アリスの声は驚きに満ちたものであった。その様子にアディル達は気遣わしげな視線をアリスに向けた。
「アリス、大丈夫か?」
アディルの言葉にアリスははっとした表情を浮かべた。
「うん、大丈夫よ」
「あの子も知り合いというわけだな」
「従妹よ……」
「そうか」
アディルはただそれだけ返答する。それを聞いたアリスはブンブンと頭を振ると両手で顔を叩いた。
「大丈夫よ。少し驚いたけど。まったく想定してなかったわけじゃないわ」
アリスはそう言うが先程のショックを受けた様子からルーティアが出てきたのは予想外の事であったのだろう。
「そうか。従兄妹はどんなやつらだ?」
アディルの言葉にアリスは静かな声で言う。
「そうね。まずは兄のレナンジェスは心優しい性格よ。実直だし下の身分の者に対しても礼儀をもって接するわ」
「そうか。それじゃあ妹の方は?」
「ルーティアは心優しい少女ね。でも決して甘い性格じゃないわね」
「流石にアリスの従兄弟だな。よく似ている」
アリスの返答にアディルが返答するとアリスはすぐに顔を赤らめた。アリスがいったレナンジェスとルーティアの言葉は二人を褒めたものであるのは間違いない。そこにアディルが言った言葉は確実にアリスを褒め称えるものであったのだ。好意を寄せているアディルからの言葉にアリスのような初心な少女が動揺するのはある意味当然であった。
「にゃ、にゃにいってるのよ。私はあの二人のように出来た性格じゃないわよ」
アリスの動揺した言葉に全員が顔を綻ばせた。アリスは褒められるとこのようにカワイイ反応を返すのだ。
「まぁまぁ、いいじゃない。それよりも、アリスの従兄妹達の戦闘スタイルは?」
エリスが笑いを堪えながらアリスに尋ねるとアリスはふぅとため息をつきながら答える。
「レナンジェスもルーティアもバリバリの近接戦闘タイプよ。レナンジェスは技巧派で業で勝負するタイプ、ルーティアは豪剣で膂力で叩き斬るタイプよ」
アリスの言葉に全員が呆気にとられたような表情を浮かべると納得した様な表情を浮かべる。見かけがどうあれ竜族である以上やはり人間の基準で考えない方が良さそうであると思ったのだ。
「みんな、安心してレナンジェスとルーティアが立ちふさがれば私は容赦するつもりはないわ」
アリスの言葉に全員が頷くがアリスが無理をしているのは全員がわかっていた。
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