溶けていく青春

秋月 聖花

溶けていく青春

 蝉の声が夏の空を支配している。夏によく見られる、遠くに浮かぶ入道雲すらもない、快晴。そんな空の下を歩く、一人の少年。背はさほど高くなく、リュックを背負い、ネットに入れたサッカーボールを時々弱く蹴りながら、照り返しのきついアスファルトの道を歩いて行く。

 周りには彼と同じようにリュックを背負い、カバンを肩に掛けている少年少女が歩いていた。その着ている服は同じだったため、同じ学校の生徒であるということは、一目瞭然だ。

 まだ学校を出て五分と経っていないような道で、分かれ道はなかった。こうして生徒がぞろぞろと歩いているのは、必然の光景だった。お互いに顔を見知った生徒だっているが、それでも、今は彼一人だった。

「夏原君!」

 だからだろう、躊躇うことなく、後ろから少女が声を掛けてきたのは。

 立ち止まって、声のした後ろを振り返ると一人の少女が走っていた。それが、よく見知った少女であることを認めて手を振る。彼女は笑って、駆け寄ってくる。

「はぁっ、はぁっ……。ねっ、夏原君、これから、帰り?」

「うん、そうだけど」

「一緒にっ、帰らないっ?」

「いいけど、先に、ちょっと息を整えた方がいいよ」

 彼女は学校から全力で駆けていたのだろう。呼吸は乱れ、肩で息をしている状態だ。そんな彼女を歩かせていても、彼女を辛くするだけだった。夏原は全然急いでいないから、彼女を待たない理由もなかった。

 彼女は、制服姿だ。半袖から覗く腕は、日焼け止めでも塗っているのか、白いままだった。腕だけではない、顔も、脚も、白いままだ。それが不健康そうな色ではないことは、彼女の表情を見ていれば分かる。ただ、日に焼けたくないから、彼女なりに自衛しているだけという話である。

「大宮さん、どこから走ってきたの?」

「えっ? えっと、最初から、かな」

「最初からって……」

 笑いながら、校舎の方を指さす。

「学校から?」

「う、うんっ。部活終わったら、夏原君が見えたから、つい」

「それで、こんなに走ってきたんだ」

 少年の足、しかし運動部の少年の足である。五分ほどとはいっても、四百メートルほどは歩いていたのである。部活帰りと大宮は言っていたから、階段の上り下りも含めると、ちょっとした中距離層を全力で走ってきたことになる。体の負担は大きいはずだ。

「い、一緒に帰りたくて」

 それだけの理由で、ここまで走ってきたらしい。別に無理しなくてもいいのに、と夏原は思うが、彼女がそうしたかった、というのだから、彼に止める理由などどこにもなかった。一人の帰り道は寂しい、というのもある。

「ここまで追いかけてきてくれて、ありがとう」

「う、うぅん! これで断られたらどうしようかと思ったよ」

 そんなことはしないよ、と言って、行こうか、と彼女を促す。大宮はもう、辛そうではなかった。呼吸もいつも通り行っている。

「文化部なのによくここまで全力で走れたね」

「あ、夏原君知らない? 部活で外周走ってるのって、合唱部なんだよ」

 そういえば、と夏原は思い出す。校庭で練習をしていると、体操服を着た大勢の女子生徒が走っている場面を見かけるのだ。それも、決まって部活が始まってすぐの時間帯。今は、夏休み中だから、朝のウォーミングアップをやっている時間帯に今日も生徒が走っていた。

「そうなんだ。てっきり、バスケ部とかバレー部だと思ってた」

「彼女達は体育館だよ」

 笑う彼女は、もういつも通りに喋っている。夏原と大宮の身長は同じくらいだが、歩くスピードは彼女の方が遅い。そのため、夏原は普段より歩幅を小さくして歩いている。

 学校は坂道を登ったところにある。今、下り坂を彼らは歩いているが、その両脇には樹木や街灯くらいしかなく、暑さを凌げる場所は、木陰くらいしか存在しなかった。

 幸い、歩道に木陰が出来る時間帯だったために、直射日光を浴びるのに比べれば幾分かはマシだが、それで熱い空気から逃げられるわけもない。汗は次々と噴き出してくる。

 隣にいる大宮も同様であった。彼女は全速力で走ってきたことも相まって、汗だくだった。心なしか顔も赤くなっていて、夏原は彼女が熱中症になってはいけない、と思う。

 今年の夏は、暑い。それは、雨があまり降らなかったせいだろうか。連日、気温が上がり続けていて、部活中もこまめに休憩を取っているくらいだ。坂を下りたら、近くのコンビニに寄った方がいいかもしれない。

「夏原君、宿題進んでる?」

「難所の植物採集で標本作ってるところかな。五教科はぼちぼちってところ」」

「いいなー、私はまだ、植物採集終わってないの」

 理科の課題で、植物採集がある。地域の雑草や、普段は行かないような山で植物を十種類ほど集め、標本にして提出する、というものだ。

 植物を標本にするのは、押し花と同じ感覚だ。乾燥させるのに日を要する。早めにやらないと間に合わない筈のものだが、それを終わらせていないとは。

「今日明日にやらないと間に合わなくなるよ」

「やっぱりそうだよね……」

 お盆を目前に向かえ、夏休みはもう、後半に差し掛かっていた。植物を調べることを考えたら、採集を終えておかないと間に合わなくなってしまう。そのことを、大宮も分かっていたようで、声音は沈んでいた。

「コンクールとかあって、どうしても採集に行けないんだよね。夏原君はどこで採ってきたの?」

「僕は、家の近くだよ。山間だし、いろいろあるからね」

 夏原の家は、学校から遠く離れていて、彼はバスで通っている。ここから一度駅前まで行って、そこからバスに乗って家の方まで行くというルートだ。所要時間は約一時間。バスの乗り換えを含めれば、一時間半近く掛かる時もある。通学が大変だとは思うが、バスに乗っている時間で寝れると思えば、朝早く起きてもそこまで苦ではない。

 何もない場所だと思っているが、植物採集をするには絶好の環境で、採集するまでに掛かる時間はそれほど掛からなかった。こんな時に、まさか自分の住んでいる場所が有利になるなどとは思いもしなかったが。

「えー、いいなぁ」

 どうやら大宮は植物を採集する場所がなくて苦労しているようだ。

「私、家の周りでたくさんの植物なんて見たことないよ。雑草ばっかり」

「僕の方は、歩いて二十分くらい歩かないと、コンビニさえない田舎だから」

「うーん、それを聞くと、どちらがいいとは言えないね」

 生活は便利な方がいい。そう思うのは自然なことだと思うが、何か特殊なイベントがあった時に、自分の生活を嘆いたりするのだ。そんなことはできないよ、と。しかし、便利な生活とは縁遠い生活をしている人間は、少しくらい特殊なイベントがあったって、何の苦労もしないのだ。ささやかなことに楽しみを見出せることが多いのだから。夏原も、些細なことに喜びを見出す人間だった。例えば、そう、今、大宮と一緒に学校からの坂道を歩いていることも、喜びだ。

「それじゃあ」

 その喜びを、もう少し大きくする方法を、夏原は思いついた。彼女が乗ってくれるかどうかは微妙な所だが、切羽詰っている彼女からすれば、ぜひとも乗りたい案に違いない。

「時間あるなら、僕の家、来る?」

「え、いいの!?」

「いいよ。大宮さんが時間あるなら、だけど。植物採集、終わらせちゃおう」

「わーい、やった! ありがとう、夏原君!」

 満面の笑みで夏原を見る大宮は、本当に喜んでいるようだった。その笑みが、夏原の家に来ることなのか、植物採集を終わらせることができることの喜びなのかは、残念ながら夏原には分からない。

 坂を下りきると、国道の走っている通りに出る。信号を渡った先には、青いコンビニがあった。

「先に、ちょっとコンビニに寄って行こうか。遠いし、何か買って行こう」

「あ、うん」

 信号はちょうど青になったところだった。大宮を促して、夏原は先を進む。坂道とは違って、街路樹もろくにないような道路だ。アスファルトから立ち上る熱が、陽炎のように揺らめいているように見えた。

 信号を渡りきって歩道を横切ると、コンビニだ。中に入ると、寒すぎるほどの冷気が二人を襲う。頭上から鳴り響く電子音が、二人の来店を告げていた。

 ふと目に入るアイスクリームのコーナー。これだけ暑いのだし、今食べたらきっと美味しいだろうな、などと思う。

「はぁーっ、涼しいね」

 店内に流れる音楽に負けないほどの、しかし周りには聞こえないような声音で大宮は言う。たしかに、外の暑さに比べれば、店内はとんでもなく涼しい。が、すぐにこれを寒く感じてしまうだろう。

 猛暑の中やってきた人間が涼しく感じる気温は、相当に低くてもおかしくはない。こんなところ、に十分もいれば出たいと感じることだろう。もっとも、それが店側の狙いなのかもしれない。

 二人で飲み物を手に取り、少し涼んでいく事も兼ねて店内をぶらりと歩く。先ほど、アイスが美味しそうだと考えていたせいか、ついアイスクリームコーナーの前で立ち止まってしまった。

「買ってく?」

「そうだね」

 中に何があるのかをざっと確認してから、蓋を開けた。中から凍りつくような冷気が漏れ出てきて、肌に刺すようだ。目的の物を取ると、大宮が、私も、と言って手を中に入れた。

「ついつい、新商品見ると買いたくなっちゃうんだ」

 彼女が持っていたのは、夏原が取ったスタンダードなアイスキャンディーとは別の、梨味のもの。たしか、最近発売されたはずだった。夏原はスタンダードなその味が気に入っているし、安いからそれ以外を買うことはほとんどないのだが、大宮は新しい物には目がないらしい。恐らく、期間限定商品にも弱いだろう。

 互いに会計を済ませ、店員の声を背にしてコンビニを出る。入り口横にゴミ箱があったため、そこで立ち止まってアイスキャンディーの袋を開けた。大宮も同じように袋を破って、アイスキャンディーを取り出している。ゴミ箱に袋を捨てて、二人は駅の方へと歩き出した。

「サッカー部って、なんかいいよね」

 冷たいアイスは、体に沁みるようでやはりおいしかった。口に含めればすぐに溶けてしまうが、それもまた醍醐味というものだろう。

「なんかって?」

「ん、なんか、夏の青春って感じがして」

「それを言うなら、野球部だよ」

「えーっ、サッカーも野球も夏だよ」

 たしかに、高校生の野球の花形である大会は、夏休み期間中に行われるが、サッカーは違う。年末に行われるのだ。寒い中、ひたすらボールを追い続けると体が温まるから、ゲーム中はさほど気にならないが、終了後、クールダウンしてから体に襲い来る寒さは、筆舌に尽くしがたい。

「高校サッカーの大きい大会は年末だよ」

「あぁ……、そうだったね」

 この暑さでアイスキャンディーは早くも柔らかくなり始めていた。急いで食べないと、溶けて形が崩れてしまうだろう。

「でもさ、なんか、夏って気がするんだ。屋外スポーツだからかな」

 大宮の方も、食べ始めの頃より少し急いでアイスキャンディーを食べているように見えた。雫が垂れないようにと懸命な様子だ。

「それは、あるかもしれないね」

 サッカーにしろ野球にしろ、汗をかくスポーツというイメージが強い。その点だけを考えれば、夏のスポーツという捉え方はできるだろう。

 そして、天気のいい日にしか屋外で部活をしていない。サッカー部は多少の雨ならば外でゲームをすることもあるが、それでも、本降りの雨に強風が出てきたら外で部活をやるわけにはいかなかった。雪が積もれば、当然外で練習はできない。なるほど、たしかに夏のスポーツかもしれない、と自分を納得させることが出来た。

「でも、部活はみんな青春だと僕は思うよ。合唱部だって、夏に大きなコンクールあるじゃん。それだって、結果に一喜一憂するから、同じことだと思うけど」

 テレビ局主催の合唱コンクールはあまりにも有名だ。そのコンクールは、野球やサッカーとは違って、中学生にもスポットが当たる。それを夏原は羨ましいと思ったことがある。同年代のプレーを見ることがどれだけ向上心を刺激されるか彼は知っているからだ。

「違うんだよ。なんていうのかな、えっと……」

 大宮は、夏の青春ということに拘っているようだった。夏原にはそれがあまり理解できず、それを深めようとしてもうまくいかない。仕方がないので、アイスキャンディーを齧ると、軟らかくなっていたそれが、ぼとりと地面に落ちてしまった。取り残された木の棒が、なんとなく寂しさを漂わせる。

 それを見ていた大宮が、更に慌ててアイスキャンディーを食べるものだから、面白くなってつい笑ってしまった。まだ残っていたそれを、大きめの一口で口に入れると、しばらくして、よしっ、と嬉しそうに言う。

「私は食べきったよ!」

「最後、必死だったけどね」

「お、落とすと勿体無いじゃん!」

「それは、そうだけど……」

 だが、女子が食べるにしては大きい一口は、忘れられそうにもなかった。あんなにも必死になって食べる大宮の姿をそう頻繁に見られるわけでもないし、それがまた面白くてやっぱり笑ってしまう。

「もうっ」

 大宮はふいと横を向いてしまった。どうも、彼女の機嫌を損ねてしまったらしい。

「ごめんごめん。それで、僕としては、夏の青春について続きを聞きたいんだけど」

「あっ、そうだったね。えっとね」

 大宮が鞄の中からタオルを取り出して、先ほどコンビニで買った飲み物をくるんだ。飲み物は鞄に仕舞って、今ほど飲み物が入っていたビニール袋をそのままゴミ袋にしていた。

 夏原も同じようにしてゴミを仕舞う。なるほど、タオルにペットボトルをくるめば、結露でノートや教科書類が濡れてしまうことはない。今日は部活だからそういったものは一切入れていないが、夏休みが明けたら有効活用できそうな手だ、と思う。

「体を動かす青春っていいな、と思うの」

「そう?」

「そうだよ。達成感、すごくあるじゃん! 私達なんて、体をリズムに揺らすくらいしかできないもん。音を外さなかったらそりゃ嬉しいけど、でも絶対、運動部の方が勝った時、上に行けた時嬉しいと思う」

「そういうものかな」

「そういうものだよ、きっと」

 大宮が小走りに前を行き、夏原を振り返って、言う。

「こーんなに良い天気の日に、外に出て体動かさないなんて、勿体無いよ! 湿っぽくっても、陽が強く照っていても、それでも、どこまでも行けそうな空の下に出ないなんて勿体無いって思うんだ」

 大宮は文化部ではあるが、体を動かすことが好きな少女だった。休み時間は外に出て運動のできる女子と一緒に遊んでいるし、休日はどこかへ出かける予定を毎週のように友達と組んでいるのを見かける。家でじっとしていることができないのだろう。

 その気持ちは、分からないでもなかった。夏原だって、晴れた日は喜んで外に飛び出してボールを追いかける。自転車に飛び乗って、少し遠くまで景色を見に出かける。雨が降れば、窮屈な部屋の中に居なければならないから、それが憂鬱になるのだ。

「夏の空気の一部になれそうな気がするの。それが、羨ましいって思う」

 大宮の言っていることは、ちょっとばかり難しかった。そういえば、彼女は国語の成績がよかったんだったか、とこの時になって初めて思い出す。可もなく不可もなくな成績の夏原には、少々難しい話である。

「それは、バレー部や、合唱部、美術部なんかではできないの?」

「だって、外にいないじゃん! 夏休み、公園ではしゃぐ小学生の子達は景色の一部だよ。屋外でスポーツしている中学生だって同じだよ」

 言われてみればそうだ。夏原の家の近くでも、小さい子どもたちが虫を追いかけ回して連日騒いでいる。それを煩わしいと思ったことは一度もなかった。元気そうでいいな、と思うくらいだ。今のうちに、夏を楽しめ、とも思う。

 少々難しい言葉で彩っているが、大宮の言いたいことも、そういうことなのかもしれない。

 屋外で部活をやっている生徒のことを、夏を楽しんでいると思っているのかもしれない。四季にはそれぞれ楽しみがあるが、学校でできる夏の楽しいことなど、夏休み中に部活に明け暮れることだけなのだから。

「溶けていく、って思わない? こうやって歩いていると」

 それはきっと、暑さで溶けそう、という意味ではない。自分達が景色の一部となっている、という意味であろう。

「夏にアイスを食べるのと同じくらい自然なことだってこと?」

「うんうん、そんな感じ」

 空を見上げる。秋の空に比べれば高くはないが、それでも、雲一つない青空は、心を澄み渡らせてくれると思う。

 飛び出していける、どこまでも。大宮も、そう思っているのかもしれない。

「汗を流して、得たものってきっと何物にも代えがたいよ。形として残らないけど、心の中に残るんだ。今、アイスを美味しいって感じたように」

「うん、そうだね」

 大宮の言葉は、自分自身に言い聞かせているようにも思えた。そういえば、合唱部のコンクールは間近に迫っていたはずだった。彼女は今日も、窓を開け放った音楽室で声を出しきっていたのだろう。仲間と共に、汗を流しながら、必死に歌っていたのだろう。

 夏休み中に出来る練習は、授業期間中の何倍にもなる。その分、心に残るものも、多い。

「コンクール、いい結果が出るといいね」

「そうだね。全力で、歌ってくるよ」

 それを思って、彼女に応援の言葉を投げた。笑顔で頷いた彼女は、何の迷いもなくて、輝いていて、彼女だって青春しているじゃないか、なんて思う。

 そうして部活のことを語らっている間に、もうバスターミナルに着いていた。広場にある時計を見て、バスの時刻表を見ると、もうそろそろバスがやってくる時間だった。

「この暑い中待たなくて済むよ」

「私は待ってても問題ないけどね」

 夏原としては、この暑い中じっとしているだけというのは嫌だったのだが、大宮は違った。もしかすると、夏原よりもバイタリティがあるかもしれない。

 ……帰ったら母さんにご飯作ってもらおう。

 せっかく友達を家に連れていくのである。家に着けば昼ごはん時はとっくに過ぎているから、何か食べないと活動するには辛くなる。植物採集は暑さとの戦いになるから、涼しくなれるようなものを母には作ってもらわないといけないだろう。

「お昼、何食べたか食べたいものあった?」

 横に立つ大宮に話しかけると、彼女は目を丸くしてしまった。まさか、食べないつもりだったのだろうか、彼女は。

「えっと……」

「母さんに作ってもらうからさ」

「えっ、私の分もいいの!?」

「もちろん。その代わり、ちょっと課題教えてくれると助かるかな」

「喜んで!」

 大宮は大きく頷いた。これで、滞っている課題も少しは進むことだろう。

 バスが来て、大宮と二人、乗り込んで席に座る。二人の他にも少数ながら人が乗り込んできて、席が埋まっていった。

『発車致します、ご注意ください』

 アナウンスと共に、バスは走りだし、景色は流れていく。大宮と二人、何もないような田舎町へと向けて、バスは走っていく。

「夏原君」

「ん?」

「今日は楽しもうね!」

 そう言って大宮は流れていく景色を一人楽しそうに眺めていた。その姿を見て、夏原も心なしか嬉しくなる。今日は、特別な一日になりそうであった。

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