第44話 改めての恋人
こいびと【恋人】
恋しく思う人。相思の間柄にある、相手方。
恋人関係にある二人は基本イチャイチャする。特になりたてだと。
カーテンから漏れる朝日が照らすベッドの上、寝た姿勢のまま二人で目が合う。
「あ・・・おはようございます」
「・・・おはよう」
気恥ずかしくなって、思うように言葉が出ない。お互いに。
「「あの!」」
「・・・先どうぞ」
「い、いやトキの方先でいいぞ!」
そうツチノコが言うと、トキはもじもじと顔を赤くする。少し話しにくそうにしていたが、やがて口を開く。
「・・・昨日、ツチノコと・・・その、恋人?になる夢を見て・・・その、ヘンですよね」
「と、トキ?」
「なんですか?ごめんなさい、おかしなこと言って」
にぱっ、とトキが笑ったその時、ツチノコが急に頭を近づける。当然のように唇同士が触れる。少しして、ツチノコからまた少し距離を取り・・・
「その、夢じゃないだろ?」
そう言った彼女は、珍しく頬を赤らめて目線を逸らした。トキはそんな彼女に底無き愛しさを感じる。
「そっか・・・よかった、夢じゃないんですね。じゃあ・・・こうしてもいいですか?」
ベッドで横になったまま、ぎゅうっとトキがツチノコに抱きつく。お互いの息遣いをしっかり感じ取れるほどの距離。ドキドキして、相手の息が少々荒いのが良くわかる。
「もちろ・・・んっ」
ツチノコが「抱きついてもいい」という返事を待たず、トキは唇を奪う。抱きついた姿勢から頭を近づけることでより相手の感触が感じられる。とくんとくん、という心臓が伸縮する音すら感じる。
「・・・けっこうがっつりするんだな?」
「だって、今までずっとこうしたかったんですから・・・」
ツチノコが意外そうな顔をする。
「え?それってつまり・・・?」
「そうですよ、私はずっとツチノコのこと好きだったんですから。ずっと片想いで寂しいなぁって思ってたんですよ?」
「そうか、それならもっと早く気がつけばよかったな?」
「いいんですよ、今こうして居るんですから。もう・・・一口だけ、いいですか?」
しばらく、ベッドから降りずに朝を過ごした。
※いかがわしいことはしてません
何故僕はここに居るのか?正直そう思う。
消えてなくなりたい、そんな気持ちである。
最近も同じことを考えた、理由は違うが。
そう考えるのも当然かも知れない、そもそもこの場に戸田井奈羽は必要か?
「ツチノコ〜、これとっても美味しいですよ!ふわふわです!食べてみません?」
「じゃあお言葉に甘えて・・・」
今、僕はカフェに来ている。僕が個人的に行きたかったから誘ったのだ。しかし、何故僕がこの二人を呼んでしまったのかわからない。なんだこの二人。
「んっ・・・ほんとだ、ふわふわ」
当然のように、シフォンケーキを「あーん」させるトキ。自身が使っていたそのフォークで。そしてそれをこれまた当然のように受け取るツチノコ。無論口で。
「あのさぁ・・・君たち、いつだったかの関節キス云々はどこいったの?」
「そりゃだって、私らもうアレだそ?ほら、コイビんんん!?」
ツチノコは話す途中でトキに口を塞がれる。ツチノコが状況を読み込めずもがもがしているとトキが早口で喋り出す。
「ななな、なんでもないですよ!ただ、慣れただけです!それだけです!」
(誤魔化すの下手だなぁ・・・あの一件から発展したのかな?)
ジトッとした目でナウは二人を見つめる。その様子を察してか、また一段とトキが早口になる。
「ナウさん何か疑ってません!?なんでもないですってばぁ!」
そうトキが発したかと思うと、急にツチノコが動き出す。トキが自分に対し当てている手を退けて、きょとんとこちらを向いているトキに思い切りキスをする。何度目だろうか、もう数えきれないほどしている。ナウの退院日に一回、その後しばらくして昨日で何回も何回も。今日、起きてから既に五回以上はしている。
「と、まぁそういうわけなんだナウ。な、トキ」
「はい、その・・・はい」
恥ずかしさと照れが混じったような表情のトキ。対してツチノコはさほど表情に変化を見せない。
「そ、そっかぁ・・・はは、あはは」
一番表情に変化が出ているのはナウだ。それはそうだろう、予想外も予想外だ。びっくりして変な笑いが出る。
「うん、これからも二人で幸せにね・・・うん。なんだか居づらいなぁ、僕は帰ろっかな」
「ええ!?ナウさんが誘ってくれたんじゃないですか!」
「そうだぞ、なんでナウが?」
ナウも、「君たちのせいだよ」とは言えない。もっとも、二人のことは心の底から応援も祝福もするし嫌な訳では無いが・・・目の前でイチャイチャしているのを、正面でどうしていればいいのかわからない。
「わーったわぁかった!ほら、ちゃんと一緒に食べるから!」
ナウは渋々席に戻る。
その後、約三時間二人の愛を見せつけられたとかられてないとか・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます